澁澤龍彦全集 (18)
澁澤龍彦全集 (18) / 感想・レビュー
梟をめぐる読書
1981年7月、全集を一巻から律儀に読み進めてきた読者にしてみれば漸く、本当に漸くといった形で、純然たる小説作品の書である『唐草物語』がお目見えする。むろん、エッセイ的な技巧と小説的な文章が錯綜するそのスタイルは「近代小説」というより〈コント〉のフォーマットに近く、どうやらここで澁澤は、典拠となる書物から得たインスピレーションを想像力の翼によって、自由に発展させてみせたものと思しい。一部の短篇の主人公には著者の自意識やロマンティシズムの投影が見られ興味深い。それにしても「空飛ぶ大納言」の題名のインパクト。
2013/07/26
季奈
泉鏡花賞を受賞した「唐草物語」には、私の好きな短編である「金色堂異聞」が収録されているため、この巻を心待ちにしていた。 この話の構成上のモデルとなったのは、アポリネールの「プラハで会った男」であるが、唐草物語の物語群自体が、何かしらほかの作品に祖型を拝借しており、筆者の浩瀚な知識と、それを換骨奪胎する能力の高さが窺えるといえよう。 肝心の金色堂異聞についてだが、私が気に入る所以となったのには、清衡と邂逅したことで他の観光客と切り離され、宙吊りなまま中尊寺を眺めたこと、そしてカプセルの中の黄金世界を
2021/09/07
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