澁澤龍彦全集〈19〉 ドラコニア綺譚集,ねむり姫,三島由紀夫おぼえがき,補遺1983年
澁澤龍彦全集〈19〉 ドラコニア綺譚集,ねむり姫,三島由紀夫おぼえがき,補遺1983年 / 感想・レビュー
梟をめぐる読書
まずは『ドラコニア綺譚集』。単独で読むと77年の『東西不思議物語』と同系列のエセーと受け取られがちだが、文献の渉猟からフィクションへの遊離を示してみせた例として、本作の試みは明らかに『唐草物語』の延長上にある。続く『ねむり姫』は、第二の小説作品集として数えられるものの「火山」「陽物」「征服」といった男性的なエレメントが支配的だった前作からは一転、「水」や「少女」に関連した女性的なモチーフが物語の多くを占めており、早くも作品世界の変貌を窺わせるものとなっている。小説家としての澁澤龍彦の発展を跡付ける一巻。
2013/07/28
HANA
エッセイや小説と多岐に渡る内容だが、ドラコニア奇譚集が一番澁澤らしさが出ていた様に思う。エッセイの題材も澁澤好みで、知の迷宮を先導される感じを存分に味わうことができた。ねむり姫は小説集。幻想文学としてはそれなりだが矢張りエッセイの方が好みに合う。三島由紀夫については死後これだけの時間を経て、ようやく語った故人との思い出として興味深かった。
2010/12/31
723
私も彼に関しては小説よりエッセイめいた作品の方が好き。眠り姫よりドラコニア綺譚集のほうが、相変わらずの、彼のペダントリーが発揮されていて楽しくよめた。特に箱の中の虫についてが可愛げがあって気に入った。こういうのはまさに彼の話の標本箱のなかのコレクションを見せてもらっているようで、私としてはそこに彼の少年性とか感性がかいまみえてすきなのです。
2012/01/12
うち子
全集を集めるという趣味は、良いがまずいと思う。とても楽しかった。
2013/06/23
季奈
「ねむり姫」に収録されている短編は、すべてが翻案小説だが、数作品の文学的コラージュにより、いずれの短編も澁澤流に換骨奪胎されている。 この中でも特に、私は「狐媚記」が狐玉というオブジェに、左少将が息子ともども翻弄され、振り回される男のさもしさを描いているから気に入っている。 また「ドラコニア綺譚集」の玉虫の話が、解題にある書かれなかった小説「玉虫三郎物語」に関連があると解題に記述があるが、以前に加山又造の版画を評したときにも玉虫の話題を出していたことからも、澁澤にとって玉虫は特別な虫であったのだろう。
2021/10/13
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