大岡昇平 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集 18)
大岡昇平 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集 18) / 感想・レビュー
KAZOO
この巻は大岡昇平の作品です。武蔵野夫人、捉まるまで、サンホセ野戦病院、労働、黒髪など、あと講演録などが収められています。武蔵野夫人はフランス文学(とくにスタンダール)の影響を受けている気がします。結構スタンダールの作品を訳しています。大岡の代表作というと武蔵野夫人もそうですが、俘虜記、野火、レイテ戦記でしょう。それらがないのが残念ですが捉まるまで、が比較的似たような感じであっという間に読めました。
2016/07/30
starbro
池澤夏樹=個人編集 日本文学全集全30巻完読チャレンジ第十九弾です。大岡昇平の作者名、その代表作『武蔵野夫人』も作品名は知っていましたが、いずれも読むのは初めてです。池澤夏樹セレクトにしては、代表作を収録しているのに驚きました。『武蔵野夫人』は、60年以上前に書かれた作品ですが、現代においても然程古めかしくなく、先日読んだ『伯爵夫人』何かよりも、男女のラブ・アフェアを見事に描いています。その他の作品では『母と妹と犯し-文学の発生についての試論-』、『二極対立の時代を生き続けたいたわしさ』 がオススメです。
2016/08/15
優希
大岡昇平というと戦争文学というイメージですが、これを読んでその世界は幅広いことに驚きでした。代表作が『武蔵野夫人』しか収録されていませんが、その分新たな一面を見たような気がします。戦争のみならず、性愛も描く作家ということ、スタンダールの翻訳者でもあったということを知りました。
2016/08/03
jam
昭和を語る時、避けては通れない不条理が「戦争」である。従軍し俘虜の経験から著した「俘虜記」はあえて実録とせず、自問することで心の襞深く分入り、後に「レイテ戦記」を生む。また、武蔵野を舞台に成就無き愛を綴る「武蔵野夫人」では、スタンダールを敬愛した著者の眼差しから愛の形を描き、戦後ベストセラー小説となった。日本という国のアイデンティティの在り処を文学により希求したことは、俘虜を経て歴史(戦争)を考え続けた大岡の意志の顕われと言えよう。端正な文章は静かな力を内在し、大義という楼閣にある武力と対峙する。
2016/09/10
ぐうぐう
大岡昇平と言えば、『野火』に代表される戦争体験を記した作家という印象が強く、そういう意味では『俘虜記』から選ばれた三編が、読んでいて一番しっくりと来る。しかし、その三編を読み進めていくと、『野火』がそうだったように、大岡の戦記ものがただ単に戦場での体験を綴った作品ではなく、戦場という非日常での日々が、いかに大岡に生きるということ、あるいはそもそも世界とはという疑問を抱かせたかを描く、いわゆる思索的小説であったことに改めて気付かされる。(つづく)
2016/07/23
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