中上健次 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集23)
中上健次 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集23) / 感想・レビュー
starbro
池澤夏樹=個人編集 日本文学全集全30巻完読チャレンジを始めました。 https://bookmeter.com/users/512174/bookcases 第一弾は中上健次です。代表作を数作品読んで、著者を理解しようと考えましたが、実は全作家人生をかけて一つの大きな物語を書いていたと言うのにまず驚き、当初の目論見が崩れました。かといって今更全作品を読む時間も気力もないので、数作品ではありますが、「生と性、死、紀州」の作家という理解をし、記憶に留めたいと思います。
2015/04/02
優希
濃厚で読み応えがありました。感想を書くのが難しいくらい凝縮された濃さのある作品です。『鳳仙花』がメインに。生と性の激しい波を母親目線で描いている物語には孤独の影すら感じます。男女から生み出される爛れるような官能と、子供たちが織り成す複雑な風景が印象的でした。独特の世界観と文章は、同時収録の短編にも伺えます。全てを読み終え、中上健次という作家の凄さが突き刺さったような感覚に陥り、鳥肌が立ちました。
2017/07/31
KAZOO
この池澤さん監修の全集を読まなかったら、たぶん中上さんの小説には手を触れなかった気がします。喰わず嫌いというのかほかに読む本がありすぎなのかなのですが。読んでみて日本人の生活の原典のような感じがしました。この巻だけではわからないので少し時間ができたら三部作といわれているのも読む気にはなりました。
2015/02/28
syota
長編『鳳仙花』を読了。貧しい家に私生児として生まれ、15歳で新宮へ奉公に出たフサの半生記。勝一郎、龍造、茂蔵というタイプの異なる3人の男との出会いや、心の拠り所であった母や兄、夫との死別、子供たちを女手一つで育てる奮闘ぶりなどが描かれている。太陽と潮と土の香りに包まれているのが、いかにも中上健次作品らしいところ。戦前から戦後にかけての動乱期を生き抜くフサのたくましさとともに、男を引きつける艶っぽさもあふれていて、秋幸3部作とはまた違った魅力がある。秋幸サーガの前史ではあるが単独でも十分読み応えのある力作。
2017/02/07
松本直哉
男にしておくにはもったいないほどの男振りということばが心に残る。海と山に挟まれて、海の水と川の水のまじりあい、山の木々のざわめく音も潮鳴りも聞こえるこの土地で、死と生は限りなく近く、そのあわいを縫い合わせるようにホトトギスが鳴く。夏芙蓉の匂いのする男たちは土地の化身かに思えて、死んで流す血はそのまま土地に還る。少女のフサが異父兄吉広と夜の海を泳ぐ場面が美しく、二人の愛は性愛に限りなく近づき、物語の最後で彼女が彼からもらった和櫛を水の中に失うのは、まるで吉広そのものを完全に失ったかのように切ない余韻を残す
2022/09/21
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