須賀敦子 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集 25)
須賀敦子 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集 25) / 感想・レビュー
KAZOO
なぜイタリア作家の訳詩やイタリアに住んでいて日本文学というよりも世界文学的な観点の作家である須賀敦子さんの作品がこの中に入っているかということですが、池澤さんが解説などでの中にも書かれていたり、須賀さんが亡くなられたときに弔辞を読んだ関係からでもあるのでしょう。というか比較的わたしはこのお二人の作品にはその国にとらわれない何かがある気がします。私も昔からファンであり、ハードカバーや文庫版全集を読んでいますが、この活字の大きな本でゆったりと読むのもなかなか味わいがあるものだと感じました。
2016/05/31
starbro
池澤夏樹=個人編集 日本文学全集全30巻完読チャレンジ第十七弾です。須賀敦子は、初読です。このチャレンジがなければ一生読まなかったかも知れません。エッセイ、随筆、私小説的な文章には、欧羅巴の風を感じ、歴史のある街並み情景を魅せてくれます。数十年前の文章ですが、古さは全く感じません。須賀敦子は欧羅巴文学の先駆者で今で言えば、塩野七生的な存在でしょうか?池澤夏樹の思い入れは強いようですが、他の巻とのバランスを考えると一巻丸々「須賀敦子」ではない気がします。
2016/06/09
jam
池澤夏樹個人編纂のここでは「須賀敦子」の選りすぐりの随筆を収納する。大戦後渡欧し、魂の在り処を模索する若き日の敦子から、晩年、遠い眼差しを綴る敦子まで。瑞々しく彩り豊かな文章は旅情に溢れ、異国の人々と風景を描きながら、深い思索と郷愁へ誘う。池澤は著作に「詩は寄り添いでありなぐさめである」と書くが、そこにも敦子が偲ばれる。小説は物語として初めて完成するが、詩は、口ずさむ言の葉を以って完成される。美しい韻の断片は、異国にある敦子の唇から幾度もこぼれ、深いなぐさめだったろう。そして言葉は、ここに継がれる。
2016/07/01
ぐうぐう
作家というのは、うまくなればなるほど、作品に自惚れが表れてくるものだ。それは文体から滲み出てくることもあるし、主題となるものに対する理解が起こすこともある。イタリアで暮らした時代を綴る須賀敦子のエッセイは、しかしそんな自惚れがまるでない。その地をしっかりと踏み締め、住み歩くことで知る歴史が、彼女のエッセイを支えているが、そんな理解が大上段からではなく、住民としての素直な視線から描かれ、それでいて日本人という立ち位置も見失われず、絶妙なバランスが読書をイタリアという地へ誘うのだ。(つづく)
2016/05/24
syota
池澤夏樹個人編集の日本文学全集には古典の現代語訳で度々お世話になったが、今回は現代作家。概ね穏当な選択の古典とは違い、現代作家の選択には池澤さんの好みが大きく反映しているようで、相当に興味深い。例えば一葉、漱石、鴎外の大物3人で一冊なのに、この須賀さんには単独で一冊割り当てられていて、否が応でも興味を掻き立てられる。須賀さんは10年以上ミラノで暮らし、現地の男性と結婚した国際人。本書は、在住経験を綴った数多くのエッセイ集から、池澤さんが傑作37篇を厳選し再構成したアンソロジーだ。(続く)
2019/08/29
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