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榲桲に目鼻のつく話

榲桲に目鼻のつく話

榲桲に目鼻のつく話

作家
泉鏡花
中川学
出版社
河出書房新社
発売日
2019-03-20
ISBN
9784309921631
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榲桲に目鼻のつく話 / 感想・レビュー

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sin

少年がつけた噛み跡が目と口を導いて大人たちを蠱惑する。榲桲のふっくらとうりざねの平安朝の姫のたおやかな美貌から男たちの欲望が魑魅魍魎の様に描き出されて時代を遡って現出する様だ。中尉は何故にこの話を語るのだろうか?純白ではない白百合−きめ細かにふっくりとして甘く薫った娘…その娘の描写はどこか遠くを見据える様で、ぽっかりあいた目で視線を投げかけるだけで手も足も出ない、なすが儘の娘の境遇を想われて哀れだ。マルメロ(榲桲、木瓜、学名:Cydonia oblonga)バラ目バラ科マルメロ属に分類される落葉高木の1種

2024/06/15

天の川

少年時代の記憶は妖しくて美しくて哀しい。裏木戸の懸札には「今日は此の家に居り侍り、御方様たちおなぐさみ。」向いの屋敷の庭にある榲桲の樹の根方から出た女役者の死体。懸札の奥で男達の慰みものになっている自分と比べ、操を立てて殺された女役者を羨ましいと訴える少女の切なさ。少年が噛んで目鼻をつけた榲桲を少女に見立てて舐めまわす男達のおぞましさ。陰惨な話ではあるけれど、中川さんの絵がつくと昇華されて感じるのは、その絵が様式美を感じさせるとともに御本人がご住職でらっしゃるからか…。⇒

2022/05/20

井月 奎(いづき けい)

鏡花の物語はひやりと冷えた石清水のように心に沁み、そのなかのわずかな余韻によって彼の作品は際立ち、そして形成すのです。このほの暗くて少し湿り気のある物語の余韻は乙女の血の味。人の情にからめとられた乙女の心は切り刻まれて血を滴らせています。鏡花はその娘の後生を弔うために鮮烈な清水にその血を混ぜて清らかな上澄みにて世に問います。「春を売る娘のこういう心は汚れていますでしょうか?」鏡花はそう私たちに問うています。女性の、いえ無垢な者の心への挽歌は目眩を覚えさせる美しさによって彩り、香り高くあるのです。

2019/06/08

yumiha

表紙絵も美しいけれども、どのページを開いても美しい。まず挿し絵だけを堪能する。「今日はこの家に居り侍りお方様たちおなぐさみ」の表札が不穏。ストーリーは泉鏡花らしく耽美的官能的。でも、美しい女性をいたぶることも、男性の物欲しげな唾も、全く共感できない。

2019/09/07

どんぐり@京都の何処かで

和モダン、和ポップですね。見てるだけで楽しく、懐かしく。京都は岡崎のとある本屋さんで手に取り、とても大切な今から30年前の大学生であった頃の時間が一気によみがえって。 ゆっくり大切に読ませていただきます、中川先輩。

2019/05/18

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