延長された表現型: 自然淘汰の単位としての遺伝子
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延長された表現型: 自然淘汰の単位としての遺伝子 / 感想・レビュー
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ダーウィン進化をドーキンスの言葉で述べると、進化とは自己複製子の生存率のちがいが眼に見えるかたちであらわれたものである。淘汰の作用は複製子に直接働きかけるわけではなく、その表現型効果に働きかける。つまり、ある遺伝子がその対立遺伝子に対して有利になったり不利になったりするのは、その表現型効果の結果による。さらにドーキンスは本書で表現型効果の延長という概念を提出している。たとえば、ある動物種の足跡の変化がその生存率に変化を及ぼすとしたら、その足跡は遺伝子の延長された表現型の一部と見なしうるだろう。
2017/06/10
赤い熊熊
先に読んだミトコンドリア本で引かれてたから、かなり前に読んだのを再読。ビーバーの巣はビーバーの遺伝子の表現型といえる。遺伝子は生物個体という境界を超えて効果を発揮する。相手が無生物であっても生物であってもその効果は及び得るという主旨の本。新しい科学的事実を知る本ではなく、確かにそうだよなぁということを確認する本だと思います。若干くどいところがありますが、丁寧に読めば生物学の専門知識はなくても読める良書です。
2017/09/30
roughfractus02
遺伝子と個体の関係は前著『利己的な遺伝子』では成功率の反比例関係に置かれたが、本書では個体は遺伝子単位の延長された表現型と定義される。が、延長extendなる語は個体が遺伝と環境の相互作用で形成されるゆえに、一方的な拡張ではない。結果(個体)は原因(遺伝子)の直接の反映ではなく、相互的、確率的に延長されるからだ(両者の成功率は正比例ではなかった)。ここから著者は個体の行動や作られる環境もその表現型とし(クモ、ビーバー、シロアリ等の巣)、遺伝子淘汰説のミーム説への延長を前著の批判への反論を交えつつ強化する。
2017/03/05
Akio_Satake
一度は挫折をし、ようやく読了。門外漢にはちとツラい本でしたが、11章くらいまで我慢すれば、最後の1/4はたいへん素晴らしい考察で夢中になりました。というか最初の3/4までは本章ではなく論争なので、これはちょっとね…。訳者日高氏の「腹が立った」には笑えました。これで翻訳されたドーキンスはすべて読んだはずなので、あとは、氏の寿命までにできるだけ書いてほしい…です。
2012/06/16
Rootport Blindwatchmaker
原著は1982年発表。中盤までは現在では時代遅れになった論争への反論が続くので、かなり難解。とはいえ10章は、今でも誤解の多い「包括適応度」という言葉をきちんと理解できるのでぜひ一読を。本書の見どころは11章以降、「延長された表現型」論が本格化してからだ。ドーキンスらしい鮮やかな筆致で、新しい生命観を描き出す。チョムスキーによればヒトは本能的に普遍言語を持つという。だとすれば、それをもたらす遺伝的背景があるはずで、言語を基盤とした人類文明そのものがヒトの遺伝子たちの延長された表現型だとみなすことができる。
2017/03/05
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