この不思議な地球で: 世紀末SF傑作選
この不思議な地球で: 世紀末SF傑作選 / 感想・レビュー
拓也 ◆mOrYeBoQbw
SFアンソロジー。ニューウェーブ~ポスト・サイバーパンク小説。タイトルの通り、壮大な宇宙を描くSFと違い、ニューウェーブ以降の人間の肉体や内面、都市や文化、更には過去の歴史を扱う”内向き”のSFを集めたアンソロジーです。『スキナーの部屋』ギブスン(『ニューロマンサー』)、『我らが神経チェルノブイリ』スターリング(『スキズマトリックス』)、『消えた少年たち』オースン(『エンダーのゲーム』)と有名作家の短篇が並ぶ中、『秘儀』『無原罪』『アチュルの月に』がお気に入りです。締めはバラード『火星からのメッセージ』
2016/05/10
ニミッツクラス
96年の税込2500円の初版。紀伊國屋書店版で、巽氏の編んだ10編を収録。表題作は無いが良い選集で、本書でしか拝めない作品もあって読み応えがある。既視感しきりで多分再読。ギブスン、マーフィー、クリアーノら、バズビー、ハンドの作品は初訳となる。スターリングとディケンズ、カード、コンスタンティンは初書籍化。お目当ては本国92年のバラードの「火星からのメッセージ」で、これも初訳となる。“死亡した宇宙飛行士”を引き合いにした編者解説に何となく首肯できるが、不可解ななりゆきに叙情性を期待すると戸惑う。★★★★☆☆
2017/11/08
白義
オカルト哲学を題材にした疑似歴史小説や、恋愛がウィルス性の病と解明し撲滅した研究者の記録に架空書評など、書き方、題材ともに多様でバラバラなのに優れた編者序文も手伝い全体としては見事に統一感がある。ニューウェーブとサイバーパンクを通過したSFが見せる、この地球自体の内側にある宇宙の変容と拡大、可能性が暗示された傑作揃い。一押しはクリアーノ&ウィースナーの「秘義」とスターリングの「神経チェルノブイリ」。未来を描き、また未来からやってくる文学としての、SFの可能性を実感する
2013/03/08
けいちゃっぷ
今さら世紀末でもあるまいに、と思いつつ読む。 ところがセレクトが良いのか読み応え十分。 「われらが神経チェルノブイリ」は別格として、「消えた少年たち」と「火星からのメッセージ」に涙腺がゆるんでしまう。 322ページ
2013/09/16
jojou
フェミニズムやサイバーパンクなどの要素に90年代的な空気感が漂う。退廃的な雰囲気のものが多く、「世紀末SF」という括りも頷ける(特異点SFと言った方が近いとは思うが)。 ギブスン「スキナーの部屋」は退廃のビジョンが見事で橋上空間の特殊な文化のにおいが伝わってくる。切なさと爽快感のあるラストが印象的。 地球規模の遺伝子災害を論じた架空書籍の架空書評「われらが神経チェルノブイリ」(スターリング)も良かった。徐々に明らかになる災害の結果としての異様な光景の数々(地上を跋扈する知性化アライグマなど)が面白い。
2021/07/24
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