脱アイデンティティ
脱アイデンティティ / 感想・レビュー
金平糖
立場の違う9人それぞれが様々な見方から考察されているのが新鮮で面白かった。伊野氏はセクシャル・マイノリティという現場に置き換え応用。浅野氏は「物語的自己」。三浦氏は「自分らしさ」をキーワードに消費行動やキャッチコピー等から着地点のない「自分探し」に接続。斎藤氏は「解離性人格障害」から。千田氏は「言語的なアイデンティティ」の構築性と言う立場から「女性」という「本質主義的」カテゴリーを改めて「投企的カテゴリー」として救い出す。三浦氏による『消費の物の喪失と、さまよう「自分らしさ」』は共感。(続く)
2006/05/15
きいち
上野の他に浅野智彦、三浦展、斎藤環、千田有紀、小森陽一などの論者が、アイデンティティは統合されるべきものという強迫観念をリセットさせていく気合いの入った本。それは「敵との闘い方」を考えることでもある。それこそ就活やらで何度も作る自分語りや自己責任などに振り回される必要などないが、その一方で、複数のアイデンティティをマネジメントするのは綱渡りでもある。多元性に目をつぶり「ぷちナショナリズム」に向かうことだってできる現在に、どう対峙していくかは我々みなの宿題でもある。
2012/10/27
まる@珈琲読書
★★★★☆ ■2005年の出版。アイデンティティという概念が意外にも最近のものと知った。今でこそ、LGBTへの理解が進んだが、○○らしさというものをやたらと求められた時代があった。文中にもあったが、らしさが最近は自分らしさにきて、自分探しをする人も増えたようだが。アイデンティティと一言に言ってもその意味は多様なようだ。 ■『「そこのお前」にピンポイントされた時に、アイデンティティは成立する。』『だれかが対象を「マイノリティ化」しなければ、マイノリティは存在しない』
2019/08/13
nranjen
図書館本。様々なことが言われていて若干何を指すのか私の頭の中で混乱をきたしているアイデンティティ。初っ端の序章上野千鶴子「脱アイデンティティの理論」でその概念そのものの歴史的展開を説明(脱構築すべく)エリクソンがフロイト派というのも知らなかったし(フロイトの影響大)、何より社会構成主義のバーガーの師匠の師匠がフッサールというのにびっくり(現象学!?すごいぞ)自分のことなのに他者が執拗に絡む謎はラカンの理論とバトラーの言語の説明が効く。ID,少数派…。記憶と他者、ポジショナリティを論じた文が印象に残った。
2020/12/01
たろーたん
上野千鶴子の序章がいい。1~5章では、アイデンティティが当初、フロイトやエリクソン等の心理学から出てきて、アイデンティティを確立できるのが良い・成長の証だとされる「統合仮説」としてのアイデンティティの系譜が示されている。対して、6~10章では、アイデンティティそのものの見直しが指摘されている。アイデンティティは手放しで喜べるものではなく、フーコーやラカンのいう「能動的な自己から他者になる」ことであり、ホールが言うようにアイデンティティが問われるアイデンティフィケーションは、権力者の要請であると指摘する。
2018/01/31
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