街の人生
街の人生 / 感想・レビュー
どんぐり
日系南米人のゲイ、ニューハーフ、摂食障害者の当事者、シングルマザーの風俗嬢、元ホームレスの、《語り》をとおした「普通の人生」の記録。どれも面白いが、そのなかでいちばんは、最後に登場する元ホームレスの「西成のおっちゃん」。年齢を重ねると饒舌に拍車がかかるのか、家族との数十年前の出来事が現在の時間のなかで最近の出来事のように浮遊したまま存在する。飯場での生活に、東さんとか西さんとか北さんとか本名を使わないで東西南北全部使い回したこと、テント暮らしと空き缶拾い、の語りは人間味があふれて忘れがたい。「りか―『女に
2019/04/19
水色系
学生時代以来の再読。有名人とかでなく、そのへんにいる人の人生の断片を取材したもの。「マユ」の摂食障害の話。体調が悪くて、外でごはんが食べられなかった(今はよくなったが完治したわけではない)自分と重ねながら読んだ。今生きている一人ひとりに物語がある、と思うと途方もない気持ちになるよね…。
2024/09/23
いっち
マイノリティと呼ばれる5人が、インタビュー形式で語る。日系南米人のゲイ、男の感覚を捨てたくないニューハーフ、摂食障害の女性、シングルマザーの風俗嬢、元ホームレスのおっちゃん。読んでいる間、頭にあったのは、「この人たちじゃなくて良かった」という考え。良くないかもしれないけど。辛すぎる。自分は日々の仕事さえ辛いのに、この人たちの境遇は耐えられない。ただ、風俗嬢とホームレスに関しては、甘えもある気がする。その生活から脱却する努力をしているのかと憤りすら感じた。風俗嬢の「結婚するなら我慢しても金持ち」とはいかに。
2020/02/21
ケー
この本は人によって極端に感じ方が違うだろう。心の奥底に強く残る人とよくわからないまま読み終える人。何故ならここに登場するのは全く無名の市井の方々。マクロな視点で社会を見てきた人では決してわからないであろう個々人の生活のダイナミクス。これも立派な現代日本の姿だ。彼らの立場は様々。ゲイコミュニティに参加する人。大阪の飯場で長く過ごしてきた人。性風俗を生業としてきた人。著者がフィールドワークを徹底的に行い、そこから得られる彼らの「生の声」を丹念に拾い上げていたからこそできた労作。
2017/09/16
pirokichi
社会学者の著者は「生活史」(ライフ・ストーリー)とよばれる語りを集めるために聞き取り調査をしている。本書は日系南米人のゲイのルイスさん、ニューハーフのりかさん、摂食障害の当事者であるマユさん、シングルマザーの風俗嬢よしのさん、元ホームレスの西成のおっちゃんの5人のインタビューをまとめた、マイノリティではあるが「普通の人生の断片集」。普通って?普通ってすごい。すれ違う人達が、電車で乗り合わす人びとが、職場の人間が、あらためて、ひとり、ひとり、に見えてくる。著者の大作『東京の生活史』も読みたい。
2022/03/17
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