日本SF論争史: 1957-1997
日本SF論争史: 1957-1997 / 感想・レビュー
ぐうぐう
60年代から90年代までの日本SFの代表的な批評を収録した『日本SF論争史』。編者の巽孝之は、現在のSFのおもしろさに接するためには、これまでのSF論争史を再確認することが不可欠だと唱える。それは、SFというジャンルが批評をエネルギーとし、成長、進化してきたからだ。ゆえに良いSFは、物語に批評精神を内包している。そういう意味で、黎明期に安部公房がいたことは、日本SFにとって幸運なことだったに違いない。(つづく)
2017/05/26
つまみ食い
「半年ROMれ」という表現がネットコミュニティにあるが、まさに今日に至るSFを手っ取り早く「ROMる」、概念や理念、論争という文脈を理解するための最適な一冊となっている。
2022/04/10
ponkts
刊行から10年以上経ったものにこんなことを言うのは気が引けるのだが、編者自身が大いに積極的に関わったいわゆる「クズSF論争」に対して "私個人すらもが一部に巻き込まれてしまった" (p.363)とまるで他人事のように距離を置くスタンスはちょっと感心できない。編者は巽孝之である。まぁこれについては、その後のセッションで永瀬唯と野阿梓が冗談混じりに彼を叩いていたので免罪かな(こちらを参照されたい http://www.flet.keio.ac.jp/~pcres/features/ronso/1.html)。
2014/09/16
椅子
SFに関連する様々な論争や論文が掲載されており、興味深かったです。とくに「宇宙の戦士」に関する論争は正直、「面白ければいいじゃん」と思っていたんですけど、本書を読むといろんな考え方があって面白かったです。今の日本SFは、こういった論争を経て成長したんだと感じました。
2013/10/27
山像
SFマガジンARCHIVEを読んでSF批評史に興味を持ち購入。とにかく安部公房と小松左京が良い。安部公房の、語り得ないものであることを語ることで何よりも鮮明にSFの特質を浮かび上がらせる手腕はそのまま安部公房の小説みたいだし、膨大な熱量で科学的知見から文学理論、人類が選び取るべき倫理観まで一息に語り上げてしまう小松左京も然り。論争の体を取ることでこれほどに高い精度で「SFとは何か」が語れること、そしてそこには実に強く作家性が反映されることに大きな満足を覚えた(その点からすると筒井康隆は少々物足りないか)。
2014/07/06
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