妖異金瓶梅―山田風太郎傑作大全〈1〉 (広済堂文庫) (廣済堂文庫 や 7-1 山田風太郎傑作大全 1)
妖異金瓶梅―山田風太郎傑作大全〈1〉 (広済堂文庫) (廣済堂文庫 や 7-1 山田風太郎傑作大全 1) / 感想・レビュー
じいじ
稀代の漁色漢、30代にして巨万の富を築いた豪商・西門慶を主人公に、本妻と妾たち8人を館に侍らせての酒池肉林の日々…。中国三大奇書の一つ『金瓶梅』を基軸に山田風太郎が描き上げた連作短篇は、ミステリー仕立てで面白い。その館は、まさしく男の桃源郷だが、女たちにとっては和気藹々は表向き、内心は嫉妬の炎がめらめらと燃え盛っている。女同士の冷たい闘いが面白く描かれている。主人公の性へのあくなき探求心には唯々脱帽。エロさは抑え気味だが、ストーリーの巧さが光る作品である。原典の『金瓶梅』も読んでみたくなった。
2017/07/19
そうたそ
★★★★★ まさに隠れた名作というに相応しい作品。中国の四大奇書の一つとされる「金瓶梅」をベースに描いた連作ミステリであり、ミステリ史上類を見ないアプローチから書かれているというところが一つの特徴であろう。「金瓶梅」を知っていなくとも、そのストーリーの面白さは抜群であるし、ミステリ的観点からしても申し分ない。中盤以降形式がある種パターン化してきて飽きるかと思い始めてくる中、そこから終盤に向かいストーリーは加速していく。言いようのない余韻を伴い物語は収束していくのである。もっと広く読まれてほしい傑作だ。
2017/07/08
目黒乱
なんでじゃ、なんでこんなにおもろい話が書けるんじゃ。という感想よりほかにない。
2015/02/08
elf51@禅-NEKOMETAL
東西ミステリベスト100の30位。'85年版にはなく古い作品だし,何故?だが。これが結構面白い。ベースは金瓶梅なので舞台は宋の時代だが世俗は明の生活を反映しているらしい。当主の友人が探偵役だが,疑わしき第五夫人潘金蓮に翻弄される。この関係も面白い。なかなか色っぽい作品だ。当主を巡る妻妾の女の戦い,近世中国の身分のバランス,生活なども描かれ,やはり昔のエンタテイメント作家の構成力はすごい。悪女小説でもあるが,探偵小説としてもしっかり成り立っているのが評価の高いところだろう。今こういうのが書ける人はいないなぁ
2020/02/06
はんげつ
謎を解く名探偵がいるならば、罪を犯す名人がいてもいい。そんな比類なき名犯人が大活躍する傑作がこの『妖異金瓶梅』だ。犯人がとる奇矯な手段とその特異な動機との間に架かる見えない橋、それが可視化される瞬間、その頭脳と思想へ畏敬の念を抱くことになる。それが十数回も続く連作短篇集なのだから、まったく末恐ろしい小説である。その上エロミステリとしても最上で、エグいのに妖艶、それでいて本格と不可分になっている。中国が舞台、ページもやや長めというとっつきにくさはあるが、早坂吝のエロジックを好む向きには一読を強く薦めたい。
2019/02/22
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