名画読本 日本画編: どう味わうか (カッパ・ブックス)
名画読本 日本画編: どう味わうか (カッパ・ブックス) / 感想・レビュー
はまだ
根津美術館のカキツバタの金びょうぶは、真空のように張りつめていて、少しでもまちがうと、元も子もなくなる。日本画には、その種のすごみがある。この本をなぜこれまで読まなかったのか。「あえて塗り残すという不自由を経ることで、雪を描かなければという作為が蒸発して消えていく。」筆を動かすその時間について「冒険の時間が感じられる。」など、各種の日本画にコメントしているが、魔法使いくらい文がうまい。だからこそ、すべてに(本当にすべてに)うなづける。あとオレすごいモテたい。★5
2018/05/10
ホークス
1993年刊。赤瀬川氏が日本画の鑑賞について語る。今回も絵の「美味しさ」だけを食べる。葛飾北斎『神奈川沖浪裏』は、大波が崩れかかる一瞬の静寂を描く。船客の「ナムアミダブツ」が微かに聞こえ、遠くの富士山がこの光景と、絵を観る我々をも見つめている。などの解釈が楽しい。長谷川等伯『松林図屏風』で語るのは、俳句にも通じる「隠す事によるイメージのインフレーション」。日本画の特徴として、他にも「成り行き任せの効用」を挙げる。著者は着眼点が面白い。難しい概念を自分の言葉で、ユーモアも交えて説明してくれる。楽しかった。
2023/11/17
mayumi225
相変わらず中毒性のある原平さんの名画講座。「西洋の絵に陰影があるということは,午後三時なら三時と切り刻んだ瞬間の樹を描いているわけで,一方の日本画に陰影がないということは,何時とも特定しない,いわば無時間の樹,つまり心に感じ続けている樹を描いているのだ。」もう,ギュンと来てハハーッてなります。どの章にも発見がある。斬新でポップなタッチで書いているのに,言われてみると真理すぎて,二度と忘れない。で,今回もありました,それが故の要注意表現。浮き世絵美人を捕まえて「肉の隙間のような目,虫のような口」て,やめて!
2018/05/28
白義
料理にも絵画にも味わい方というものがあるが、特に絵画は誰かからその美味しさを教えてもらったほうがさらに美味しくなるということがよくあるし、しかも料理と違って一緒に味わっても減るということはない。本書の案内による名画の味わい方は極めて魅力的で、何度も絵の細部まで気づきの連続となることだろう。東洲斎写楽の江戸兵衛が深爪しすぎてなんだか薄気味悪いと感覚で細部に眼を向けさせたかと思えば、北斎の富嶽三十六景の青の使い方から「青絵の具の解禁に燃え立った浮世絵師たち」という技術的側面も読み込む変幻自在練達の名講義である
2016/04/08
てっしー
学生時代以来の再読(多分)。1枚の絵からこんなに語れるなんて・・・作者の鑑賞眼や感受性に感心させられるというよりは、自分の貧しさが恥ずかしくなる。言われてみれば至極当然のことなのに、言われるまで気づかない。こういう本を読み続ければ、鑑賞眼は鍛えられるのだろうか?天性のものなのだろうか?(´ε`;)ウーン…
2012/06/09
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