日本本土決戦: 昭和20年11月、米軍皇土へ侵攻す! (カッパ・ノベルス)
日本本土決戦: 昭和20年11月、米軍皇土へ侵攻す! (カッパ・ノベルス) / 感想・レビュー
のれん
『日本のいちばん長い日』を見た私としてはこの小説に登場する日本側の「愛国心」の薄さに寒さすら感じる。 だがこれは作者、引いては現代日本人の本心を映しているのだろう。理屈では理解していても愛国心とか、それを引き合いに出した同調圧力による特攻など考えることも出来ない。 作中では民間人が次々と特攻し、人口が壊滅的となりながらゲリラ化し、大本営はナショナリズムと共に沈む。 最悪のシナリオを一切同情感も沸かせず描くことで、米国側と同じクレイジーな日本人に対する憐憫に共感すらさせるのだ。日米架空戦記として希有な一作。
2020/06/26
半木 糺
架空戦記物といえば日本が悪逆なる米軍をあの手この手を使って倒し、日本人の中に未だにあるアメリカへのコンプレックスを解消させる…。そんな形式が定番であるが、本書は全く違う。アメリカの本土上陸という歴史上十分にありえたシナリオを再現し、その凄惨な状況を迫力ある筆致で描いている。作中で次々に死んでいく両軍兵士や日本の民間人の姿は恐怖を通り越して空々しささえ感じさせる。「歴史のif」を描いた作品として架空戦記物という枠を超えて評価されるべき作品であろう。
2012/05/17
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