「カラマーゾフの兄弟」続編を空想する (光文社新書 319)
「カラマーゾフの兄弟」続編を空想する (光文社新書 319) / 感想・レビュー
KAZOO
亀山さんのこの作品に対しても思い入れがこのような本と「新カラマーゾフの兄弟」という作品に結実しているのでしょう。やはり論点が学者的な部分が多いような感じがして、もう少し文学者であったら飛躍的な感じにしたのだろうなという気がしました。昔よんだ江川卓さんの謎ときシリーズ(ドストエフスキー三部作)を読んだときのほうがわくわくした覚えがありました。この本を読んでみて再度「カラマーゾフ」を読もうと思っています。
2016/02/22
翔亀
予告されながら作者の死により書かれずに終った「カラマーゾフの兄弟・第二部」。研究者による推論や作家による創作(高野史緒,円城塔)があるが、数少ない証言や「第一部」に埋込まれた証拠により、論理的に推理する。作家の創造力が命の小説において、この試みが成功しているとは言い難いが、逆にキリスト教社会主義者による皇帝へのテロが頻発する中で、ドストエフスキーが、皇帝権力により死刑判決を受けて、監視の下に権力を欺きながら時代に挑戦したからこそ、あれほどの人間の根源に迫った作品を書けたことが、ありありと理解できるのだ。
2014/08/16
kazi
亀山先生による、「カラマーゾフの兄弟」の続編予想です。カラマーゾフ周りの事実関係を整理しなおすには本書は最適だと思う。度重なるテロルに鞭身派や去勢派の台頭。凄い時代だったんだな~と、あらためて実感しました。第一の小説や作家の生きた時代から続編に思いをはせることは、カラマーゾフを読み解くうえで最高の読書法なのではないかと思う。続編への鍵はやっぱコーリャの存在感だよな~。火薬と鉄道、そして社会主義者。やはり彼が皇帝暗殺の直接的下手人になる?そしてアリョーシャは13年前のように弁護台に立つ?うーむ、どうだろ?
2020/09/09
シッダ@涅槃
ここまで作品をねっとり読んでみたいものだ、という憧れを持つ。リーザの指の自傷行為に、そんな意味があったとはね……。◆哲学はときに社会通念をぶっ壊すいきおいのぶっ飛んだことを言う、という僕が近年思ってたこと裏書するような事態に遭遇。ニコライ・フョードロフ。人間は子のために生きるにあらず。父祖の肉体的(クローン的)復活に生きる。そこにはキリストも含まれる。といった思想。正直引いた。ドストエフスキーは子ども好きと推察されるので彼の思想には最後の最後で賛同しなかったのでは?と思う。◆ネタバレには全く配慮ないです。
2021/11/04
デビっちん
光文社古典新訳文庫版の訳者である著者が、『カラマーゾフの兄弟』の続編についての空想を語っています。物語事態があるわけではなく、当時の状況だったり背後にある力関係を考え、前作に続いての構成を検討している内容でした。ムムムと唸らされた文庫版の解説を一段と強力にした感じでした。このレベルで考えられたら、さぞ楽しいだろうし、同時にかなり苦しむだろうと感じました。
2020/02/02
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