愚か者、中国をゆく (光文社新書 350)
愚か者、中国をゆく (光文社新書 350) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
タイトルには違和感を覚えないではないが、これは著者が自らの若き日々を韜晦を込めてそう名付けたもの。そして、同時にあの旅の中でターニングポイントとなったドストエフスキーの"Idiot"を踏まえてもいる。本書は2008年に、20数年前の中国紀行を回想して書かれたもの。ただし、紀行でありながら中国論にもなっている。そして、それはまた星野博美の自らの思惟を顧みる旅でもあった。香港があのような状況にある今、本書の意義は再び立ち現れてくる。なお、「おわりに」は、ここまで感性を共にしてきた読者としてジンとくる。
2020/11/16
みっこ
この本たまらない!なぜなら私も学生時代、シルクロード列車の旅を経験したからです。(しかも著者の別作品に影響を受けて)懐かしくてたまらなくなりました。80年代の中国旅行がこんなに大変だったとは…。文中にもあった通り、中国を見に来たのか切符を買いに来たのかわからない(笑)辛い道のりだっただろうけど、文章がユーモアたっぷりで、笑ってしまいました。新書ですが全く硬くなく、当時の情勢がよくわかります。自分の体力的にも治安的にも、もう一度訪れるのは難しいかな。悲しいけど、こうして本を読んで追体験できて幸せです。
2014/11/30
tu-bo@散歩カメラ修行中
星野博美さんが、1987年に香港から敦煌までボーイフレンドと旅をした記録。当時の列車の旅の過酷さや、生の中国を書いている。同時にこの旅は、彼女のセンチメンタル ジャーニーとなった。臨場感はあるし、落ち着いた文体は読みやすかった。しかし以前に読んだ『転がる香港に苔は生えない』に比べてもう一つという印象だった。☆三つ 値段相応の価値あり、でも再読しないだろう。図書館で借りました<(_ _)>
2014/11/01
なにょう
うまい。中国に行ったら色々感じると思うけど、感じた・考えたことを言葉にするのはうまい。★もったいない。結局、いかに大変なことをして他人に自慢するかを目的に旅をしてるから、同伴者を大切にすることができなかったんじゃないの。「馬鹿じゃない。無謀過ぎる」他人に一蹴されて終わり。それよか、自分自身が満足する、同伴者と何年か後にあの旅は良かったと語れる旅行がしたいじゃないか。★何てことない場面からすごいこと考えつく洞察力には感服するだけにもったいない。或いは若さ故か。
2017/04/14
Sakie
香港に住む10年前、星野さんは香港中文大学に留学し、社会主義色強い中国を旅した。その20年後に訪れた中国は、資本主義色を濃くしていた。公共交通システムから何から、スケールが違う。広大な国土、桁違いの人口、国家の成り立ちに由来する非合理的で超平等な社会の在りかた。わが手に得られるものに対する熱量が尋常でない。星野さんはそれらに納得したうえで、資本主義を取り込んだ中国の行く先を危惧した。『中国では何かが起きる時、徹底的に、破壊的に起きるからである』。人々の長く培った飢餓感は今も暴走している気がする。"激烈"。
2024/03/27
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