小説の言葉尻をとらえてみた (光文社新書)
小説の言葉尻をとらえてみた (光文社新書) / 感想・レビュー
ゆかーん
小説の中にある何気ない言葉。その一言から、時代の変化を感じ取れるとは思いもしませんでした。宮部みゆきさんの『桜ほうさら』では、江戸時代の会話の中に現代語を取り入れて、親しみやすいように、あえて今風の言葉に変えた文章にしています。また、平野啓一郎さんの『マチネの終わりに』でも、2000年以降に使われるようになった「真逆」という言葉が、時代の垣根を越えて存在していました。その時代に合わせた言葉遣いと、読者に対する親しみやすい言葉使い。「言葉」には、その時代によって様々な使われ方が成されていることを実感します!
2018/01/19
いちろく
純文学からライトノベルまで、2004年以降に刊行された15作品の中で使われているコトバの言葉尻をとらえた内容。けして「誤用」として揚げ足を取るのではなく「言葉尻」として考察していく点が、辞書編纂者の飯間さんらしく読んでいて不愉快な感じがしなかった。むしろ、独特な切り口の小説考察として読め面白かった。
2019/05/22
活字スキー
お気に入りさんの感想から。「筋を追っていくだけが小説の楽しみ方ではない」という出だしからワクワク。辞典編集者だという著者ならではの目線で、比較的若い作家の近作を題材にして、まだ辞典に載っていない用例採集の旅に。意外と古くからある言い回しもあれば、逆に新しいもの、元々から意味合いや用法が変化してきたものなど。言葉は生き物。形式的な「正しさ」や「成り立ち」はさておき、肝心なのはやはり「伝わるかどうか」だよね。本を読む楽しみがさらに深まったように思う。面白かった。
2018/12/23
torami
言葉のプロである、作家と辞書編集者。両者は付かず離れずの関係にある。 小説は辞書に頼りながらも、辞書から自由であろうとする。その工夫からは豊かな表現が生まれる。一方で辞書は、小説内の言葉の変化を呑み込んで、自身をも変化させていく。このいたちごっこを経て、言葉はどんどん豊かになってゆくのだろう。 作家が辞書を語るエッセイは数あれど、辞書編集者が小説を語るのは珍しい。小説読みの方に広く読んでほしい本です。
2019/03/31
Nobuko Hashimoto
面白かった♡ ←思わずハートを付けたくなる感じの良さ。飯間さんの本は、ことばへの愛情と探究心、「正解」を押し付けない姿勢、愉快な文体がとても好き。今回はイラストもオモシロ可愛いので、家族に見ろ見ろと押し付けてしまった。現代の小説から最近の言葉遣いを調べてみる本。新しいようで実は古くから使われている語法や、マナー講座で正解とされている表現(目上には「お疲れ様」)が最適とも言えないという指摘などにふむふむ。書かれた時代や作家の方針・出身が反映されている可能性を分析していくプロの技の深さと広さに感嘆。
2019/03/07
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