石に咲く花 (光文社文庫 く 3-2)
石に咲く花 (光文社文庫 く 3-2) / 感想・レビュー
新田新一
また直木賞作家黒岩重吾の本を読みました。自選の短編集です。どろどろとした愛欲の世界が描かれ、露骨な男女の性愛の場面も多いのですが、不思議と静謐で、一抹の哀感を感じる物語ばかりでした。文章が整っており、詩的な表現が多く使われているからでしょう。他の昭和の男性作家と異なり、古風な女性観も出てきません。「華麗な墓標の影」が一番好きな短編です。女好きの外科医が影のある美貌を持つ女性と出会います。彼女は末期の癌でした。薄幸な女性に翻弄されながら、彼女の治療に力を尽くす男の感慨が陰影深く描かれています。
2024/11/09
感想・レビューをもっと見る