展望塔の殺人 (光文社文庫 し 5-12)
展望塔の殺人 (光文社文庫 し 5-12) / 感想・レビュー
セウテス
【吉敷竹史】シリーズ第7弾、初の短編集。本作の価値は1987年の時点で、ストーカーやキレる若者、至上主義に身障者差別など、2020年の現在においては当たり前となった問題を取り上げている事だろう。タイトルの「展望塔の殺人」、展望塔の中で殺人が起こり、犯人は展望塔の特性を利用してトリックを仕掛けた、という様な物語ではない。日本の住宅事情、受験競争、その歪みが生み出すサイコパスの事件なのだ。他の作品も身近に感じられる問題であり、ちょっと寒気を覚える。実際に起こった事件を思い出し、忘れない様にしたいと改めて思う。
2020/06/07
sk4
ズウゥゥーン・・・と暗い圧力で押しつぶされました! 過剰なる受験戦争を煽る親や教師、大人たちに押さえつけられて生き抜く当の子どもたちは何を考え、どう感じているのか? 大人たちは大人びた子どもに称賛を向ける傾向があるように思いますが、それは【子育て=煩わしい】、つまり手放しで勝手に学業に優れた大人に育ってさえくれればこんなに楽な事はないという子どもじみた大人のエゴ。 IQが高いことは喜べるか? IQが高過ぎた少女が導いたロジックは・・・ 社会派推理小説家の島田荘司先生らしい、重力のある短編集でした。
2013/07/07
ピッポ
著者の「都市論」を下敷きにしたさまざまな社会問題がテーマとなっている短編集。大都会「東京」の抱える現実に即したテーマ故か、いずれの作品も暗く重く圧し掛かかり、ゾっとさせる。怪奇趣味的な謎と強引な解決も島田先生らしい。
2017/03/05
coco夏ko10角
吉敷竹史が登場する『発狂する重役』『展望塔の殺人』を含む6つの作品収録の短編集。『発狂する重役』の真相はなんからしさを感じて面白かった。ここの感想で知ったけど、吉敷が焼き鳥屋で会話してる相手が…そうなんだ。『D坂の密室殺人』乱歩風味でよき。 緑色の死/都市の声/発狂する重役/展望塔の殺人/死聴率/D坂の密室殺人
2020/12/18
Tetchy
珠玉の短編集である。何にも増して驚嘆させられたのはその先駆的題材である。昨今巷間を賑わしているストーカー犯罪、キレる若者による突発的犯行。“昭和62年”の時点でこの“平成の世”の社会の歪みを予見していたかのようである。恐るべし、島田、流石は島田と褒め称えよう!
2009/04/25
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