漱石と倫敦ミイラ殺人事件 (光文社文庫 し 5-23)
漱石と倫敦ミイラ殺人事件 (光文社文庫 し 5-23) / 感想・レビュー
kagetrasama-aoi(葵・橘)
島田荘司氏の作品、長編第七作目。傑作です!夏目漱石とシャーロック・ホームズの二種のパロディ楽しめます!そう言えば「占星術」で、御手洗潔がホームズについて言及しているところ、この作品読んでなるほどなぁ……って思いました。島田氏(御手洗)はホームズ愛に溢れていることがわかります。歌野晶午氏の「死体を買う男」は島田氏のこの作品へのパスティーシュなんですねぇ、きっと。
2023/05/01
ばりぼー
二十数年ぶりの再読。夏目漱石が1900年から2年間英国に留学した史実を元に、作家的想像力が炸裂した怪作にして快作。奇数章は漱石の未発表手記、偶数章はワトスン執筆のホームズ譚という交互に語り手が入れ替わる構成が、お互いの変人ぶりを際立たせていて絶妙です(笑)。密室の中で男が一夜でミイラになるというメインの謎は、短編でも処理できるような誰でも見当がつくトリックですが、読みどころはそれよりも事件解決後のオチにあるでしょう。漱石愛、ホームズ愛に満ちた実に楽しいパスティーシュで、正典への興味が湧き上がってきます。
2019/03/13
ピッポ
【再読】夏目漱石が、ロンドンに留学中にシャーロックホームズとワトソンと出会い、不可解な事件を一緒に解決するというアイデアが秀逸。物語は漱石とワトスンの視点で交互に語られ、その文体は、漱石、ドイルの特徴を巧みに真似ていて、特にワトスン視点のパートは、ドイルを読んでいるかのように錯覚してしまうほど。またホームズについて、ワトスンが美化しているのに対して、漱石は斜に構えて変人扱いしているのも非情に面白い。作者のホームズ、漱石に対する愛情が感じられる。
2016/05/31
のっぱらー
漱石とホームズは同じ時代を倫敦で過ごしていたんですね。漱石視点とワトソン視点とで描かれるホームズ像(かたや若干シニカルなノンフィクション(?)、かたやドイル調)の対比がなかなか面白かった。とくにワトソン視点の部分は本当にドイル作品を読んでいるかのような錯覚に陥るほどでした。トリック自体はなんとなく想像がつく内容でしたが、このホームズと漱石の共演というアイデアを作品化した部分がとにかくすごい作品でした。
2014/10/07
猫丸
ベイカー街にニ奇人あり。狂的沙翁フリークたるクレイグ氏と偏執的犯罪研究者ホームズ氏である。我らが金やんこと漱石夏目金之助が倫敦留学中に奇妙な事件に巻き込まれ、ホームズともども謎解きに参加するという話。ミステリ苦手な僕としては犯罪の手口など想像の埒外であった。ただヤク中ホームズと、わりにまともな漱石先生の交流次第が楽しくてしょうがない。出だしはイマイチな島田流漱石文体も、後半p.225からはまさに先生が憑依したかと思われるほど。なかなか良し、でした。
2020/02/11
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