雨女 (光文社文庫 あ 12-4)
雨女 (光文社文庫 あ 12-4) / 感想・レビュー
Yu。
一筋縄ではいかない超個性派による変幻自在の騙し技で読み手を大いに愉しませる6つの泡坂マジック。‥読まれた方皆が言うように前半の三作品と後半のそれとでは随分趣が異なります‥ という訳で内に秘めた女性の情念が垣間見れる人間ドラマな前半戦でのお気に入りは、艶めかしい蘭を咲き誇らせる老女の耽美かつ幻想的な秘密に顔が火照ってしまう「蘭の女」。コミカルでドッキリという著者の陽の部分が満載な後半戦でのお気に入りは、仲良し三人組がひょんな事からある女性と知り合う事で奏でられる妙味な事件にニヤリ顔「ぼくたちの太陽」。
2016/11/29
キーにゃん@絶対ガラケー主義宣言
雨女/蘭の女/三人目の女/ぼくたちの太陽/危険なステーキ/凶手の影 91年1月光文社『ぼくたちの太陽』改題 解説:長谷部史親 もう泡坂先生名前凝りすぎ(笑)
2017/10/03
新天地
巻末の解説にもあるように前半の3本は男女の性愛を主にしたミステリ、後半3本は本格兼ユーモアミステリとなっていて、自分は後半の方が好み。その中の「ぼくらの太陽」の舞台の北海道の地域とそこの警官たちが「亜愛一郎」シリーズと同じ人で、「危険なステーキ」での主人公の警官コンビは「煙の殺意」と同じ二人。さらにその容疑者の一人が好きな江戸時代の役者は「亜智一郎」シリーズに出てきた役者。きっと探せばもっと見つかるであろう遊び心がとても面白かった。また「凶手の影」はコメディチックだけどかなり禍々しいモノがありこれも好き。
2017/10/14
浅木原
恋愛・官能ミステリー3編と初期泡坂路線のコミカル本格3編の計6編。どっちかといえば『煙の殺意』収録作の雰囲気をもつ後半3編が好き。「ぼくたちの太陽」は霧昇湖の双頭の蛸にニヤリとしつつ、魅力的な謎と亜シリーズのようなドタバタ劇、そしてあまりに泡坂なオチまで実に楽しい。「危険なステーキ」は望月警部と斧技官シリーズで手堅いフーダニット。このシリーズまとめて読みたいなあ。「凶手の影」は二転三転するプロットの捻りが良い意味で泡坂らしくなくて良い。前半の官能ミステリは泡坂作品としてはあんまり特筆することないかなあ。
2015/01/04
Tetchy
泡坂版「奇妙な味」短編集で全く以って一筋縄ではいかない作品群である。不能な自分の代わりに若者に自分の妻を抱かせる歪な愛をモチーフにした「雨女」を始め、「蘭の女」、「三人目の女」は何とも云えない読後感を残す二編だ。そして次は当初青春小説かと思わせ、ファンタジックなパラレル・ワールドを展開させ、最後は見事論理的に着地する「ぼくらの太陽」、そして六篇中どちらかといえばまともな本格物に位置する最後の二編と、誠に幅広いマジックを展開させてくれた。
2009/05/03
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