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哲学者の密室 下 (光文社文庫 か 30-2)

哲学者の密室 下 (光文社文庫 か 30-2)

哲学者の密室 下 (光文社文庫 か 30-2)

作家
笠井潔
出版社
光文社
発売日
1999-03-01
ISBN
9784334727796
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哲学者の密室 下 (光文社文庫 か 30-2) / 感想・レビュー

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セウテス

矢吹駆シリーズ第4弾(下巻)。ミステリとしては解決編、犯人の予想はついて仕舞うのだが、物語の流れ的に浮かぶ人物なのが不満に感じる。ナチスの問題に実在の二人の哲学者を、物語の中の人物として登場させ、駆と論議を交わす演出は確かに重厚である。作者が云わんとしている事を、正確に理解出来たのか疑問が残るが、密室ミステリに結びつけた必然性が在るとは感じられない。過去の事件から背景を推理して、現代の事件に人物を当てはめるのは其れなりに楽しめる。しかし謎解きを目的に読む作品ではなく、戦争や死に対する思想を読む作品だろう。

2017/09/03

おたま

下巻では、「後編 ジークフリートの死」が全体を占めている。ここが前編、中編で提出された二つの「三重密室」の謎を解明していくところとなる。ただ、普通のミステリーと異なり、矢吹駆は論理の一貫性のみによって解決はしない。むしろ、目前の事件現象からは多様な首尾一貫した論理的な帰結が可能となってしまう。それを最終的に一つの論理に収束させていくものが、事件現象の「本質直観」だという。小説中の現代のダッソー家の事件は「生成してしまった密室」として、またコフカ収容所での事件は「作られた密室」として、謎は解かれていく。

2023/03/18

りんご

上巻から引き続いて『死の哲学』に言及しながら、密室殺人事件を紐解いていく話。今回は助手であるさナディアの物音トリックもなかなか面白い推理だった。あと、やっぱりナディアのジャン・ポールを馬鹿にしたり、周囲の人に同情するような軽いノリがないと、難解で読むのが流石にきついと思った。トリックが物理トリック多めなのに図解がほとんどないので、ややこしかった。それからダルテスはここまでやらかしてもクビにならないんだとある意味感心した。

2022/09/04

CCC

長かったけれど、過去の収容所パートやハルバッハ(ハイデガー)哲学の解釈をやっている部分、その論理とミステリ要素の重ね合わせ方、思想が自己欺瞞と結びつき腐敗するさまを書いているところなど、面白いところは本当に面白くて没入した。力作。

2023/06/15

Yuki Ban

僕の中に死の意味が多数追加された。宙づりになっている死。生きながらの死。汎用な死。哲学を全うするための死。特権的な生の意義を突きつけるための死。様々な死が、第2次大戦時の強制収容所での事件、現代のユダヤ資産家邸での事件を経て、浮き彫りになってくる。死体が積み重なることを通して、生者が死を考えることを通して、死の価値観の対決を通して、我々はそれぞれの違いを認識していく。タイトルにある密室は、作者が新たな死を提示するための装置だ。ラストに犯人が漏らした本音に賛同するが、死をめぐる議論を僕は無意味だと思った。

2018/11/23

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