天使が消えていく (光文社文庫 な 1-21)
天使が消えていく (光文社文庫 な 1-21) / 感想・レビュー
セウテス
〔再読〕もちろんデビュー当時に、乱歩賞を競った「高層の死角」と供に読ませて頂いた作品です。日本のクリスティーと称された夏樹静子氏の、その時代の新たな社会問題を取り込みながらも、人の心の悲劇を描いた作風を確める事ができます。二つの違う立場から事件を追って行き、やがて一つに重なり謎が見えてくるスタイル、近年では良く見かけるこうしたプロット一つとっても、作者たちが最初に作り出したからこその今なのだと再認識しました。作品を形作るトリックは、母の愛と結び付いた物語であり、まさに夏樹氏の特徴でもある代表作と言えます。
2016/03/22
有理数
ああああ……なんということだ、これは素晴らしい。とある殺人事件と心臓病の赤ちゃんを巡る母親と記者の交流。警察パートが凄まじく単調で、亜紀子パートの面白さでどうにか持っていたのですが、中盤のとある推理にはものすごい説得力があったり、パート同士がついに接続する展開なども熱く、それで十分に私は楽しかったのです。しかし、このラストはいい意味でずるい……、とてもよかったです。夏樹静子は他にも読み進めてみたいです。
2017/03/13
honoka
★★★☆☆昔の作品だけに古臭くさいし平凡だなぁって思いながら読んでいたら、ラストである人物の印象が今までとガラッと変わって驚いた。切ない真相だったけど、愛する人への無償の愛に感動。そして読了後にタイトルを見て泣きそうになった。でも、主人公の亜紀子のことが好きになれなかったのでこの評価。他人の子どもにかなりの愛情を向ける一方で、本気じゃないにしろ、子どもがいる既婚者と身体の関係をもつ…。亜紀子の心理が私にはよく分からなかった。
2022/11/12
造理
★★★★☆ 惜しくも江戸川乱歩賞を逃しましたが、どんでん返しが心地よい名作です。2つのパートが交互に描かれ、それらが繋がっていき構図がひっくり返る流れは今ではよく見ますが当時は斬新だったはず。ドラマ化もされているそうです。
2018/06/15
空と海の間
ホテルで宿泊客、また後日そのホテルのオーナーが殺される事件。一方、婦人記者が出会う、心臓疾患児とその母との出会い。二つの視点が交互に描かれ、一見関係ないような二つの話に徐々に接点が見え始め……。タイミングよく各章の視点を切り替え、ジワジワと謎を追いかけていくかたつむりテンポにいい意味で焦らされた。でもなんか微妙に決定打に欠けるし、接点も曖昧なところがあるな~などと終盤まで物足りない感が拭えなかった――が、ドッコイ。最後でポカーン。「限りない愛と献身をテーマ」ってあらすじに書いてあったじゃないか、私!
2016/11/04
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