山田風太郎ミステリー傑作選 3 サスペンス篇 (光文社文庫 や 23-3)
山田風太郎ミステリー傑作選 3 サスペンス篇 (光文社文庫 や 23-3) / 感想・レビュー
タツ フカガワ
『今夜、すべてのバーで』の中島らも氏との対談が面白くて手に取ったのが本書。サスペンス/ミステリーの短編12話と、表題作は老刑事八坂を主人公とした10話の連作からなる昭和30年代の作品集。この昭和の匂いが古さではなく作品の味わいになっているようで、サクサクと読了。ユーモアとアイロニーの陰からちらっと顔を出す至言も楽しい読書でした。前者の短編では「飛ばない風船」「環」「知らない顔」、表題作のなかでは「黒幕」「一枚の木の葉」が面白かった。
2024/05/08
出世八五郎
表題作はポール・ヴェルレーヌの詩「からす麦、しげった中の立ちばなし、夜よりほかに聴くものもなし」から。表題作他に12の短編が収録。昭和30年代辺りに発表されたものばかりで、どれも面白いが何故か内容は忘れる。ひとつ上げれば【動機】が◎。【吹雪心中】も良かったが、どの作品も落ちには苦労してそうだ。表題作は犯行動機がメインに描かれた連作短編もの。社会批判や人間批判など、デメリットを省みない犯行動機に山田風太郎らしさがある。2001年初版を積んだまま、21年後に読み終えることが出来た。
2022/02/19
きょちょ
表題作は連作10篇。 これは再読。 今読んでもとても面白い! すべての犯罪が同情に値する。 最後の刑事の言葉は、鮮明に私の記憶に残っていた。 「鬼さんこちら」「飛ばない風船」「知らない顔」「動機」は、昔TVでやっていた「ヒッチコック劇場」を観ているようだった。 「吹雪心中」は異色作、短期間で変容していく人間の「心」が面白い。 「環」は悲しいけれど、どことなくユーモアがある作品。 「寝台物語」は幻想的な感じが好き。 ★★★★
2016/01/27
ペペロニ
随分前に一度読んでから久しぶりの再読。動機、ホワイダニットが中心のミステリ短編集。山田風太郎の人間を見つめる冷めた目が発揮された作品集。時代が少し古いけど、十分楽しめた。「目撃者」の後味の悪さというか訳のわからなさが怖い。「動機」は小説でこそ出来る引っ張り方で強烈なラストを迎える良作。
2017/10/26
有理数
八坂刑事の活躍する短編連作『夜よりほかに聴くものもなし』を中心とした傑作選のサスペンス編。表題作以外では、少年と女性、そして先生の三人による手記と告白の謎に迫る「不死鳥」、滑稽でありながら秀逸な帰着が面白い「とんずら」「飛ばない風船」がお気に入り。しかし、やはり表題作は出色の出来。人間が人間を殺すということ、人間が人間を裁くということ、そんな人間社会における犯罪の闇をこれでもかと描き切った傑作である。相対する刑事と犯人の会話劇をここまで心打たれる物語に構築する作者の手腕に脱帽。さすがと言う他ない。
2013/10/30
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