ペトロフ事件: 鬼貫警部事件簿 (光文社文庫 あ 2-32 鮎川哲也コレクション)
ペトロフ事件: 鬼貫警部事件簿 (光文社文庫 あ 2-32 鮎川哲也コレクション) / 感想・レビュー
Kircheis
★★☆☆☆ 日本ミステリ界の巨匠が書いた初長編作品。 クロフツの『ポンスン事件』を真似てタイトルを決定したらしい。 この作品から既に鬼貫警部も登場している。 時刻表を使った簡単なアリバイ崩しかと思わせておいて、最後にアリバイミステリの全否定かと思うような訳の分からない一捻りがされている! 短くてサクッと読めるので、鮎川ファンなら読んで損はない。ファン以外には全く勧めないけど(笑)
2022/07/23
aquamarine
舞台は戦前の満州。ロシア人富豪イワン・ペトロフを殺したのは三人の甥のうちの誰なのか。鬼貫警部によるアリバイ崩しものです。甥達の思惑はもちろん楽しめるのですが、戦前の満州での日本人中国人ロシア人という多民族のやりとりや情緒あふれる当時の情景が美しく描写されていて、まずはそこから楽しみました。アリバイ崩しは凝ってはいませんがひとつひとつ綺麗に潰していく安定したもので、時刻表や地図を眺めるのも(眺めるだけですが)楽しかったです。処女作で古い作品ですし本人は習作とおっしゃいますが文章は読みやすかったです。
2015/11/05
へくとぱすかる
鮎川さん自身は「習作」だと位置づけていたらしいが、クロフツの「ポンスン事件」に触発されただけあって、私はすごい「秀作」だと思う。アリバイ崩しがテーマだが、本格ミステリの条件である、意外さのレベルは非常に高い。何よりも戦前の大連~満鉄沿線の日常を今に伝える作品としての資料的価値も高い。和風が一切感じられないエキゾチックな雰囲気は、欧米黄金時代のミステリ以上だ。
2017/07/21
geshi
3人の容疑者のアリバイ崩しに挑む正統派推理小説としてよりも、描写される旧満州の方が読み物としては興味深く映った。現地にいた人でしか書けない日本と中国とロシアの入り混じった異国文化あふれる旧満州の空気感まで伝わるようなリアルさが、今は無きものを感じさせる。アリバイ崩しを3つにしたのも、鬼貫を東奔西走させるためだったのかと納得。アリバイトリックはシンプルなものだが、それぞれ重要な要素が重なっている所は面白く感じた。でもちゃぶ台返しのような一捻りまではいらなかったなぁ。
2022/12/12
yai
鮎川哲也氏デビュー作。満州鉄道時刻表やら鉄道網やらの図に、うへぇ……。苦手。苦手なのですダイアログ。だから3秒くらい見てフンフンと理解ったつもりで読み進めました(ひでぇ!)。内容は遺産絡みの老人殺し、容疑者は3人。アリバイ崩しの丁寧な良作な上に、真相が結構好きです。デビュー作でこう結末つけるかァ、と。鮎川先生本人は恥ずかしいだの、習作だのとあとがきで述べてますが、いえいえ。国内本格ミステリーにおける大切な先生のデビュー作、充分堪能しました。黒いトランク、~白鳥、りら荘……まだまだ未読あるので楽しみです。
2020/03/30
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