夕鶴恋歌 (光文社文庫 さ 16-2 光文社時代小説文庫)
夕鶴恋歌 (光文社文庫 さ 16-2 光文社時代小説文庫) / 感想・レビュー
星落秋風五丈原
「 花篭に月を入れて」(小説宝石昭和58年3月)美濃大垣藩寺社町奉行の息子でうつけ者と噂され、縁談の相手にも何度か断られている若い武士塩川荘太郎が、世間の評判とは異なり、意識的に真の姿を隠していた事をひそかに彼を慕う女中おみつが知り、事の真相がわかる。題名は『閑吟集』の歌の文句「花篭に月を入れて、漏らさじこれを、曇らさじと、もつが大事な」から取られており、その文句でそれとなく二人の心の通いあいを示した。男と女の結びつきは、御盆に張った水を二人で一生持ち運ぶようなもの。
2004/06/07
山内正
父九郎太は後を頼むぞと家を出た 母は半蔵を抱き泣いていた 父には大垣に妻と子がいた 京で途切れ途切れに合う暮しが三年 突然藩の改革で四百五十人の永暇が 父も落胆で京を離れた 今半蔵は大津を船で向う 大垣に腹違いの妹がいる 宿に入り二十年前の永暇の話を聞く 父の名を言い 掛け戻った奉公人が 青い顔で 今は吉住様と名を変え 勘定奉行にと 養子で入られてと 怒りで身体が震えた 宿の番頭が ここは辛抱なされませと宥める 登城する父の顔を土下座して 見上げた 二十二年前の人が良い 優柔不断な人が余程の事が?
2020/10/05
たーくん
少し悲しく暗い。
2010/07/22
山内正
冷たい井戸水で顔を洗い竈に火を 奉公四年のおみつ おっとりした娘 荘太郎の姿を探す夫婦 板間で食事し蔵に膳を探しに 二階に荘太郎がいた閑吟集と書いた 目に入る 両親に本当を見せてはと 荘太郎は驚き、お前だけだと感心した 殿に国で凡庸になれと命ぜられと 相手親娘と五人が談笑する声が 横目で凡庸だと顔をして見る娘 辞した後に 父にあの手の女は合いませんと、殿が春帰国し改革を致します 自分の妻はと おみつを呼ぶ 声に伊万里を落とし 花籠に月を入れてとあのー冊を 呟き客間へ近づく
2020/08/17
オレンジ。
澤田さんのシリーズ物は殆ど読了したので、未読の本を探して読んでいる。これは市井ものの辛く悲しい短篇集。290ページの中に「花籠に月を入れて」「うらのまつやま」「水の蛍」「夏の囃子」「半蔵泣くな」「夕鶴恋歌」「師走狐」「川端の宿」の8編がひしめいている。長編を書くのは難しいだろうけど短篇はもっと難しいのかもしれないと思った。
2014/11/08
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