涙流れるままに 下 (光文社文庫 し 5-31 吉敷竹史シリーズ 15)
涙流れるままに 下 (光文社文庫 し 5-31 吉敷竹史シリーズ 15) / 感想・レビュー
chiru
吉敷刑事のシリーズものだと知らずに読んでしまいましたが、この上下巻の独立した作品だとしても、読んでよかったです。 下巻は冤罪事件の核心に迫っていく。吉敷刑事が冤罪に対し『救いたいものがいる、改善したい世界がある、ただそでだけだ』と言い、胸が熱くなりました。そして大切な存在である通子を信じるからこそ苦しみ『信仰も信念も意味がなくなった』の一言に、胸が潰れそうになりました。 こんなに重厚な作品は久しぶりかもしれないです。 吉敷刑事みたいな刑事さんに憧れてしまいます。 ★5
2018/02/05
たか
吉敷竹史シリーズ。上下巻合わせて千ページを超える大長編にして、シリーズ最高傑作!本書を読むために、地味なシリーズを読み続けてきたのか、というくらい素晴らしい内容。 最愛の夫のもとを去らざるを得なかった元妻通子が,封印した過去を探るのだが、その過去は到底受け入れ難いものであった。しかし,元妻は少しずつ自分を赦し,元夫も彼女を赦して受け入れる。その過程の記述が実に素晴らしい! 今まで不可解だった彼女の不審な行動や人をイライラさせる性格が、本書で全て払拭される。ラストのホームでの見送りシーンに再び感動。A評価
2018/01/20
tengen
吉敷竹史シリーズ15。下巻。盛岡ー釧路と調査を進める吉敷だが、通子の釧路での奔放な暮らしぶりを知り愕然とする。天橋立に暮らす通子はクリニックで催眠療法を受け封じられた過去を蘇らせる。自らのルーツを追い求めおぞましい血脈を知る通子。そして、かつて麻衣子と埋めた禁断の缶を掘り起こし、遂に真実にたどり着く。恩田事件再審請求に奮闘した結果、旧態然とした警察組織を背くことになった吉敷は上司・峯脇に辞表を叩きつける。そんな彼を出迎えたモノは。。。吉敷は流れるままに涙を流した。☆彡最後は良かったけれど、通子さん痛い。
2022/10/13
Tetchy
今回島田の語りたいテーマがかなり網羅されているように思う。冤罪事件、組織改革、記憶もしくは脳に対する研究。これらをモチーフに通子と吉敷のストーリーを仕上げる手腕は相変わらず凄まじさを感じる。最後に用意された吉敷の鬱屈感を一掃する対面と警部昇格の知らせは盆と正月が一度に来たようなもので吉敷シリーズの第一部フィナーレを飾るに相応しい幕切れだった。しかし、通子の業はまだ続く。恐らくはまたもや暗鬱な日々が二人に訪れることだろう。だからこそ、中年を過ぎた二人に似つかわしい甘いやり取りもまた許せるというものだ。
2009/09/08
おうつき
自らの職を賭して、冤罪事件に挑む吉敷。事件の中に見え隠れする元妻・通子の姿に苦悩しつつも真相に迫っていく。シリーズの集大成に相応しい作品で、吉敷竹史の魅力がこれでもかという程に詰まっている。通子の過去のエピソードは流石に冗長すぎないかと感じたが、ラストまで読み終えると満足感に溢れている。過去作を読み返すと通子の姿もまた違って見えるのだろうなと思った。心揺さぶられる物語だった。
2019/03/22
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