神聖喜劇: 長編小説 (第1巻) (光文社文庫 お 9-5)
神聖喜劇: 長編小説 (第1巻) (光文社文庫 お 9-5) / 感想・レビュー
踊る猫
数年前に全五巻を通読しようとして、見事に挫折してしまった苦い思い出がある。だから今回は腹を括って読み直し。やはり「神は細部に宿る」という言葉を裏づけるかのような微妙な言葉遊びや、台詞の訛り/吃りの口調のリズム感がクセになる。日本語で書かれているという気がしない。翻訳文学を読んでいるかのような悪く言えばカタい、良く言えば端正な文体に痺れる。奇しくも今年は大西巨人生誕百年。特に意識したわけではないけれど、この巨編を「今」読む意義はあると励まされた次第。読めば元気になるという噂を聞いた。いよいよここからが本番!
2019/07/18
カピバラ
三浦しをんさんが本で薦めていたのでAmazonでポチる。届いた一冊の厚みにびびりながらも、読んでいくと…あれよあれよと読み終わってしまった。 超人的記憶力の東堂が、理不尽な上官たちに歯向かう姿は痛快だが、ハラハラもさせられる。大根は機密情報か?話はウケた。福岡の方言が出てくるので親しみ深い。 さあ、どっぷりつづきに漬かりますか!
2020/01/15
松本直哉
たとえば大根の葉は軍事機密か否かをめぐって、延々と何十頁にもわたるやり取りと脱線と独白で、上官たちの言動はまるでスローモーションのように見え、それだけに一層滑稽で無意味な細部が浮き彫りになる。敬礼の仕方から箸の上げ下ろしにいたる軍律の些末主義を上回るような語り手東堂のトリビアリズムが、上官たちの言動を絶えず揚げ足をとりながら論破してゆく。軍国主義を批判しながらあえて兵士となった男のひややかなまなざしはあらゆるものを喜劇化する。大前田軍曹の残虐自慢に反吐がでそうになるが彼が戦いの行方を最も正しく見ている皮肉
2019/09/13
おおにし
最難関の積読本である神聖喜劇全5巻に再挑戦。前回は1巻目で挫折したが、今日時点で第2巻まで読破できた。第2巻まで読んでわかったのだが、第1巻は独特の文体に戸惑う上に引用文が多ため読むのに骨が折れる。第1巻で挫折する人が多いのには理由かある。第1巻で印象的だったのはやはり、「知りません」は「忘れました」と言わせる暗黙ルールについてのエピソードだ。指示を出す上官に責任はなく、すべての責任を下っ端に押し付ける構図は今の官僚に通じるものを感じる。大前田班長の戦地での経験談は鬼気迫るものがある。一気に2巻へ進む。
2019/08/01
俊介
傑作。物語は太平洋戦争中、「日本の要塞」である対馬に、主人公が派兵されるところからスタート。彼は、持ち前の正義感と、人並外れた記憶力を駆使し、軍組織に立ち向かっていく。。と、設定としてはエンタメ小説ぽいのだが、主人公の独白がやたら長く、脱線もしまくりで、肝心のストーリーが遅々として進まない…笑。古典や規則書からの引用も多く(この辺が全然エンタメじゃない)、読むのに難儀はするが、それはそれとして、本書が傑作なのは、主人公独特の視点、思想・哲学。時に皮肉たっぷりな表現がおかしくて、読みながら何度も吹き出した。
2020/10/07
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