神聖喜劇: 長編小説 (第4巻) (光文社文庫 お 9-8)
神聖喜劇: 長編小説 (第4巻) (光文社文庫 お 9-8) / 感想・レビュー
やいっち
ひたすら唖然の(軍隊における法律法規を巡る)緊迫の論議が続く。本作品の理解には、加藤陽子著の「歴史の本棚」所収の論考が資する。
2014/09/04
踊る猫
読みながら、私自身は昔英文学を少し齧った人間なのでハーマン・メルヴィル『白鯨』を連想した。軍隊の内部をフェティッシュに描いて、やや退屈で冗漫ではあるものの読ませる。このムダこそが小説の面白味なので、もちろん批判するつもりはない。第四巻ではドストエフスキーばりの対話/ポリフォニーが印象に残った。バフチンは読んだことがないのでこの方面からの分析は出来ないが、一体批評家はこの対話/ポリフォニーをどう読むのだろうか。いよいよ大長編も佳境に入って来た。ここからが正念場。挫折しないように、気を引き締めるつもりである!
2019/07/19
松本直哉
寡黙な冬木をめぐる謎が徐々に明らかになる。何か犯罪が起きたとき、部落出身者であるというだけで嫌疑をかけるその他大勢と、部落出身者であるからなおさら共感同情する東堂自身が、結局は同じ穴のムジナではないかという彼自身の省察。軍に入れば皆平等というのは建前でしかなく、学校出は揶揄され部落の者は蔑視される構造は外の社会と変わりないどころか一層醜悪な形で凝縮されるのは、「無謬無垢」の大元帥天皇を頂点に据えてあらゆる責任を目下の者に押し付けて恥じない無責任体制としての軍である以上当然なのかもしれない。
2019/09/29
みつ
第4巻にはいり、物語の向かう方向、輪郭がはっきりしてくる。冒頭で田能村竹田への傾倒が語られた後は、もっぱら前巻から続く「異変」の犯人探しが取りざたされ、出自と過去の出来事を知る者は冬木二等兵への疑いを強める。相変わらず引用は多いが、刑法の条文が主なので、昔法律を学んだ者には馴染み深い(文語、旧字のうえ句読点なし、濁音の表記なしの法律文が、自分の学生時代にはまかり通っていた。)。次第に明らかになる、「新平民」であることが招いた過去の事件。軍隊にとどまらず当時の(果たして当時だけか?)差別意識の闇が深まる。
2021/05/03
無識者
前科者・特殊部落出身の噂を持つ冬木二等兵の前身が明らかになる。現代とのつながりでは、正当防衛なのか過失致死なのか…その判断はどう行われるのかと、調べたくなった。あと、差別裁判についても調べようと思う。記憶が定かじゃないが狭山裁判を差別裁判として扱っている人もいた。どういう点で差別裁判なのか?日本の司法自体冤罪を産みやすい土壌にあるのではないか等調べることいっぱい出てきてしまった…しかしあいにく法律関係の本は憲法の類しか自宅にない。新学期始まったら借りよう。
2016/03/21
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