甘露梅: お針子おとせ吉原春秋 (光文社文庫 う 15-1 光文社時代小説文庫)
甘露梅: お針子おとせ吉原春秋 (光文社文庫 う 15-1 光文社時代小説文庫) / 感想・レビュー
ミカママ
うわぁ、素敵な...作品を読ませてもらった。素敵な、まで書いて、この作品をなんと呼んでいいのかわからない自分に気づきました。遊廓モノとくくるには、視点が遊女ではなく、お針子だし。ある意味恋愛モノ、しかも不倫?!しかも老いらくの...!もちろん、物語の横軸には、吉原に働く遊女たちの悲哀もあり...派手さはないものの、最高に好きな作品になりました。ぜひご一読を。
2017/04/18
Shinji Hyodo
十手持ちだった亭主の勝蔵を亡くした「おとせ」。まだまだ息子や娘の世話にはなれないと、お針の才を見込まれて三十六のおとせが決めた奉公先はなんと、吉原の遊女屋だった。得意の裁縫の腕を活かして過ごした吉原「海老屋」での一年を六遍の短編に描く宇江佐さんの江戸物語。『ひょうたん』で宇江佐さんの時代物に目覚めて今日まで、読むほどに好きになる宇江佐江戸ワールドの情緒にどっぷりはまる今日この頃。
2017/11/14
佐々陽太朗(K.Tsubota)
苦界に身を置く者は仁・義・礼・智・信・忠・孝・悌の八徳を失った者として亡八と呼ばれる。苦界に身を沈めてなお人は夢や希望を持つことがある。そのようなものを持つことが許されないことと知りつつ、それを止めることが出来ない哀しさ。そうすることがかえって自分を苦しめることになると知りながら。失った徳の中に「情」は無い。自由をほとんど奪われてはいても、わずかに「情」に人間らしさを残そうとする女の胸にあるのは「矜持」、いや、人として認められない身の上にあって、それは「意地」と言い換えたほうががよいのかもしれない。
2014/06/15
のり
夫に先立たれた「おとせ」は、吉原で、お針子としての新たな生活が始まる。仕事の正確さが周りの信用を集める。吉原の門の内外では、全くの別世界で規律も違い過ぎる。人望があるがゆえに、疎まれる事も多々…花魁の喜蝶と筆吉への想いが、切なさに押し潰される事に…出火の原因と結末にカラクリを感じる。浮舟に関しては、天上から下底に堕ちても後悔はなく、恩義ある店を思う心意気に震えた。凧助とのやり取りも、絶妙の掛け合いだったけど、吉原のお内儀は、優しさだけでは務まらないのも事実。
2017/03/05
はつばあば
ここしばらく読メの方の宇江佐さんへのレビューがみあたらないのでへそ曲がりの虫が(^^;。岡っ引だった亭主が厄歳に亡くなり、36で後家。息子は彼女に子ができた。家は狭いし・・吉原に住み込みでお針子として働きにでたおとせ。最初は偏見もあったろうが気のいいおばちゃんのおとせさん、色々な恋に首を突っ込む。そりゃ遊郭ですもの悲哀もありゃ花魁としての矜持も持ち合わせた内容の数々。その中でおとせさんが心許せる太鼓持ちで花月の婿養子の凧助さんとのなんでもなかった付き合いが、風評被害から本気の恋に。温石の代わりに・・
2018/09/21
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