イラクの小さな橋を渡って (光文社文庫)
イラクの小さな橋を渡って (光文社文庫) / 感想・レビュー
wildchild@月と猫
図書館でたまたま見つけて手に取った池澤夏樹さんのイラクレポート。フセイン政権が倒される前のイラクの、ごく普通の人達のごく普通の日常写真が、池澤さんの穏やかな言葉と共に胸に染み入る。素朴な子供の笑顔。逞しく働く女性。嬉しそうに写真に納まるイラクの男達。戦争になれば、この人達の上に爆弾が降る。原爆も広島と長崎にいた、ごく普通の日本人の上に落とされたことを思う。イスラム教とテロに注ぐ眼差しが厳しい今だからこそ、改めて手に取る価値がある一冊だと感じた。
2016/08/30
ジュンコ
あの頃読むべきだった。攻撃を受けた「一般市民」は誰かのお母さんであったり、働くお父さんであったり、遊園地で遊ぶことが好きな女の子であったり…私たちと変わらない、市民生活を送る人々。彼らの笑顔を奪っていい理由はあるのか。正義とは何かを問われる。
2017/05/04
マーム
戦争勃発の可能性が高まっていた2002年にイラクに行った池澤夏樹氏と本橋成一が、現地の様子や市民の生活ぶりを見たまま、感じたままを写真と文章で伝えるルポルタージュです。「この国の国民にも誇りがあるし、武器を以て迫られれば反発する」というイラク人の言葉にはハッとさせられました。立場を変えて考えてみれば、わが国に独裁者が君臨していて、その独裁者を倒すために他国の軍隊が日本を攻撃し、その結果、独裁者は倒れても、自国が焼け野原となった状態で、いったいどれだけの人々が感謝するだろうか?という単純なことなのですが。
2011/01/02
ゆき
今までの長くはない人生を振り返ってみる。自分は政治的な人間であるかという問いには否と答えると思う。今後もおそらくあまり変わらないと思う。だが、それは別として、人の上に爆弾を落とすということの意味(無意味)、イラク戦争のときにできなかったことを考え続けたい。何らかの形で、本当の意味での関心を持ちたいと思う。生きるということは人と関わることだから。そしてこの本がとらえた人々は間違いなく生きていたから。
2009/08/10
lovemys
戦争で犠牲になるのは市井の人々。昨日まで出来ていた生活が出来なくなるのが戦争。20年前に起きた戦争も、多くの反戦デモがありながらも止められなかった。20年後の現在も戦争はなくなっていない。私たちはもっと学ぶべきことがあるのではないか。平凡に暮らせる毎日は、誰にでも与えられるものではない。そんな不平等があっていいのか。もうそろそろ戦争の愚かさに気づくべきだ。
2022/10/13
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