破戒裁判 新装版 高木彬光コレクション (光文社文庫)
破戒裁判 新装版 高木彬光コレクション (光文社文庫) / 感想・レビュー
Kircheis
★★☆☆☆ 島崎藤村の『破戒』と同様のテーマをはらむ殺人事件の裁判劇。 話の9割以上が公判シーンで構成される。同業者として法廷物は大好物なのだが、検察官がいきなり被告人の犯罪性向を立証しようとし出した冒頭で「おいおい」となった。流石に戦後の裁判でこれはないだろう… また何度も「殺人の事後従犯」なる概念が飛び出したのにも唖然とした。一応調べたら大昔にそのような概念が用いられたことがあったらしいが、少なくとも刑法成立(明治40年)以後は無くなっている。 色々と出鱈目過ぎて、感動のエンディングも吹っ飛んだよ。
2021/01/21
たち
全編法廷シーンで、難しいのかと思いましたが、読みやすく大変面白かったです。被告人の無罪を信じる、百谷弁護士が証人の1人を真犯人として 告発するシーンは、まさに手に汗握りました。そして、この話の中で語られる不愉快極まりない社会問題が、この世から無くなることを願わずにいられません。
2016/08/28
Hideki Takahashi
ほぼ全編が裁判シーンという本格的な法廷ミステリー。徐々に謎が解き明かされるミステリーとしても充分堪能できますが、タイトルにある島崎藤村作の「破戒」との関連(部落差別の問題)が物語に深みを加えているよう思いました。法律的な部分も精緻を極めており、法廷物が好きな方にはお勧めできます。
2017/01/15
志摩子さん
島崎藤村の「破戒」そのものは実は文学史的な知識としては知っていますけれど、きちんと読んだことがありません。身分差別とか、性差別とか、もし仮に(あくまで仮に)それが有効な「ルール」だったとしても、それはそのときその場面での限定的な「決めたこと」に過ぎず、決して永続的なものではなく、ましてや普遍の「正義」などではないということ、それを常に意識できないのであれば、そんな「ルール」はとても人間などに運用できるものではない……そんなことを考えました。
2016/04/16
アルキメ
日本の法廷ミステリの原点とされる作品。作者の徹底した研究と取材をもとに描かれる法廷でのやりとりはとてもリアリティ溢れるものになっています。ほぼ全編が裁判中のシーンのみで構成されてあることもあり、「味気ない」と感じる部分もないではありませんが、被告人が殺人の疑惑をかけられたことにまつわる過去と社会的背景などは悲しくもドラマチック、それでいてミステリ的にも説得力のあるものでした。最終的に明かされる真実は感情論抜き、きっちりと決定的証拠をもとにした推理によって導かれたものであったことに好印象
2014/08/23
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