光る鶴 吉敷竹史シリーズ16 (光文社文庫)
光る鶴 吉敷竹史シリーズ16 (光文社文庫) / 感想・レビュー
Kircheis
★★☆☆☆ 吉敷シリーズの短編集。 表題作では、警部になっても相変わらず自分の思うままに捜査をする吉敷の姿にほっこりした。 また宮沢賢治の有名な『雨ニモ負ケズ』が効果的に使われた、若き吉敷の話も良かった。 ラストの『電車最中』は、鹿児島県警の留井が主役で吉敷がサブを務めるという一風変わった構成が面白いが、留井が吉敷と一度東京で会ったことをド忘れしてたのは悲しい。 個人的にはそこそこ楽しめたが、吉敷シリーズの読破を目指す人以外は特に読む必要ないと思う。
2019/08/24
coco夏ko10角
『光る鶴』26年前の殺人事件、冤罪の証拠を見つけようとするが…。 『吉敷竹史、十八歳の肖像』吉敷が若かった頃のことや警官を目指すきっかけになった事件など。 『電車最中』鹿児島で殺人事件があり留井刑事が奮闘。吉敷と留井、まるで「灰の迷宮」ぶりみたいな再会だけど、途中会ってるよね…。でも二人の会話や雰囲気がすごくいい。
2021/04/29
Ayumi Katayama
『吉敷竹史、十八歳の肖像』という短編が収められている。これが、とても好きだ。『だが、今は解る。たった今、ようやく解った。よし、自分もこのように生きてやる、とそう思った。自分が警察官になれば、あんな馬鹿な態度は絶対にとらない。今はどん底だが、決してここで潰されはしない。必ず這いあがって、今の自分と同じように打ちひしがれている者を、みんな助けてやる。みんな、みんな、必ず助けてやる、そう心に誓った。』 「解った」というのは宮沢賢治の「雨ニモマケズ」。
2020/05/23
LUNE MER
冤罪事件覆人に特化しつつある吉敷。トリックとか意外性で読ませる話ではなくて描かれている人間が魅せる。いきなり葬式シーンから入るので生きた姿では登場しないのに、吉敷に想いを託して亡くなった元ヤクザがなかなか渋い。そして本文庫本の書き下ろしである電車最中。鹿児島の留井警部補が東京に出張して足と運で事件を解決。吉敷もナイスサポート。事件そのものは地味だけど、犯人の人柄も微妙に憎めず、解決後に巣鴨で祝杯をあげながら思い出話をカミングアウトする留井さんが人間味溢れる。ゆき子のミッシングリンクなし。
2020/06/30
Tetchy
幼稚園児が快刀乱麻の名探偵振りを発揮する御手洗シリーズを書いた同じ作者とは思えぬほど、この物語は対極にある。御手洗シリーズでは、幼稚園児の御手洗が事件を解決するのに対し、「吉敷竹史、十八歳の肖像」では結局、吉敷は犯人を捕まえられないのだ。つまりここに作者の二つのシリーズの創作姿勢が現れているように思う。吉敷シリーズが極力現実の警察の捜査に即して描く事を主眼にしたリアルなシリーズにあるのに対し、御手洗シリーズは幻想味と奇想をテーマに掲げた一種のファンタジーだという事だ。
2009/10/25
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