遠野物語 (光文社文庫 も 17-1)
遠野物語 (光文社文庫 も 17-1) / 感想・レビュー
jam
この写真集は初期の作品だが彼自身のスタイルは変わらない。その行為は普遍でありながら、そのスナップ写真には時代の断片が記録されていく。写真は時に言葉より雄弁だ。音楽がそうであるように。日本人の原風景である遠野を軽く裏切る森山の物語に、見る者それぞれが自身の風景を重ねる。写真家は言葉を紡ぐのがうまいが、それはいつも被写体を通し自身と対峙するからだろう。そして、それはファインダーという河を介在し、此岸と彼岸を行き来する。森山大道85歳。未だ街頭を彷徨いシャッターを切る。
2023/12/15
さらば火野正平・寺
【読メエロ部】森山大道という写真家は名前だけは知っていた。先日『BRUTUS』でも特集されていた。写真の世界を知らない私でも名前を知っているのだから凄いと思う。この写真集で初めてその写真をきちんと見た。昭和50年代の遠野。柳田国男のあの本があるからロマンチックな気もするが、ただただ猥雑な印象を覚えた(私は猥雑が好きだ)。遠野にあったエロ本の自販機を写している。その中の表紙に「糞出し娘ウンション中」「入れポン出しポン」「いそぎんちゃく娘カムカムSEX」という惹句が確認できる。糞出し娘も今は老境だろうか?。
2016/05/31
HANA
ここに写されているのは、所謂遠野らしいところではなく70年代の日常の一コマである。なのにこのモノクロの画面はどこか異界に通じている、そんな雰囲気に溢れている。例えば敷かれている布団、田野の一本径、これらはどこにでもあるようなものなのに、色がなく切り取られただけで急に不穏なものに覆われているように思える。写真の魅力を再確認させてもらった一冊。エッセイに書かれている場所への興味は大いに同感させてもらった。
2012/06/09
nagatori(ちゅり)。
森山大道の写真は、(私にとっては)普段は心の隅っこに隠してある何気ない不安や根拠のない焦燥なんかをチクチク刺激してくる存在なので、いつも読み始めは「なんだか苦手だなぁ」と思ってしまうのです。でも、いつの間にかするすると引き込まれてしまう。あのコントラストの強い白黒写真の奥に、被写体に対する温かい眼差しを感じるからだろうか。70年代の、遠野の日常風景。ここではないどこかへ。エッセイ中の、「地図ってチャーミングでしょう」の言葉に激しく共感(笑)ああ、思いがけない所で同志を見つけた!
2014/08/04
佐々陽太朗(K.Tsubota)
ちょっと偉そうな言い方になりますが写真は予想以上にアバンギャルドです。私に写真のなんたるかが分かるわけではありません。素人目に見てとてもプロの作品とは思えないのです。「ブレ・ボケ・アレ」が特徴とされるのもむべなるかなと妙に納得しました。もちろんそれは私に見る目がないからでしょう。しかし、それほど氏はプロの写真として想像を超えたというか外れた存在でありそうです。ことほど左様に私は氏の写真の良さを理解できませんでしたが、一方で氏がエッセイで仰りたかったことは少し分かったつもりです。
2010/12/24
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