ひなた (光文社文庫 よ 15-1)
ひなた (光文社文庫 よ 15-1) / 感想・レビュー
yoshida
とある家族の日常。両親、兄夫婦、弟と恋人、兄の友人。それぞれに秘密がある。そして秘密を抱えながら生きている。「パレード」を思い出す。特に両親の秘密は墓場まで持っていくレベルだろう。日常に潜む違和感の質感ある描写が、吉田修一さんの作品の妙味だと思う。各登場人物の目線で描かれる物語は読みやすい。読み進むうちにそれぞれの秘密に行き当たり驚愕する。このギャップの楽しさ。人間、長く生きると程度の差はあれど秘密も増えるのだろう。そしてお互いの実家で育った環境のギャップが実にリアル。吉田修一さんらしさを堪能出来た作品。
2018/03/24
にいにい
吉田修一さんの4作品目。これも、深いなぁ~。ごく日常な生活が進むが、登場人物それぞれが、秘密を持っている。不安を持っている。いい人生を歩みたいと願っている。それらの関係が視点を変えて展開される。専業主婦って、能力が高く、堂々としていて、一人でも十分仕事が出来たとしても、「ひなた」から追われる不安を持っているんだ?夫との関係の永遠性に関する疑問。人に頼り切れない心情。吉田さんは、難しい課題を投げかける。じゃ、どうすればいいのという答えは見つけられるのか?吉田作品のファンになる一冊。ひなたに居ていいですか?
2014/07/04
ゴンゾウ@新潮部
恐ろしい小説だ。恋人、夫婦、親子それぞれに秘密を抱えて生きている。平穏で平和な家族を装いながら仮面をかぶって生きている。どれが正しい姿かわからなくなる。何を信じていいのか。
2016/08/18
じいじ
周り、どこにもいそうな二組のオトコとオンナ。そんな四人の日常も、吉田修一の手にかかると面白い物語に変身します。ところどころで、昔の自分と重なる場面が出てきて、忘れていた懐かしい想い出が甦ってきます。とりわけ,住み馴れた隣町、今でも訪れる柴又帝釈天や寅さん記念館、江戸川の土手…のくだりは嬉しくなりました。それにしても、女性の仕種やファッション描写は、女流作家が書いたのでは、と見まがうほど繊細で巧い。とても読み心地の良い小説です。
2019/10/16
ユザキ部長
男女4人それぞれの生き方。茗荷谷駅を降りた文京区小日向の家は急坂にあり、まれに地面ではなく自分自身が斜めに傾いてる錯覚に陥る。開けっ広げな性格の母親は実はとても苦しい人生を送った。子供達にはその斜めの坂でも心機一転、生きていって欲しい。
2015/08/09
感想・レビューをもっと見る