放蕩記 (光文社文庫 さ 11-9)
放蕩記 (光文社文庫 さ 11-9) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
初めて読んだ佐藤氏の小説。章ごとに文体が変わる構成が素晴らしい。例えば、1章はQ&A形式で、2章は1人称の普通の形式、3章は書簡体、12章は永井荷風らしき作家の文体模写という感じ。テーマは書けなくなった小説家が酒びたりになり、女性にのめり込んで、もがき苦しむというもの。最低の日々の中で、彼が見つけた救いは非常にオーソドックスなものだけど、説得力はある。子供のころに読んだ童話をもう一度思い出して、立ち直っていく過程は読書メーターに集う読書家さんだったら、ほとんどの人が共感できると思う。
2013/01/14
こすも
デビュー作で新人賞を受賞し大金を手にした作家が夜の街で酒と女の放蕩の日々を送り、破滅寸前まで堕ちたものの、小説の力で再生するというストーリー。全ての章で文体を変える実験的な作風で、特に全て台詞の章は「語り」の佐藤正午さんの面目躍如。前半に散らばせておいた伏線を見事に回収して、美しい港の風景や小説を愛する気持ちを鮮やかに描くラストのカタルシス。そして、作品全体に漂う諧謔と寂寥感が僕はとても好きです。ただ、実験的な作風ゆえ一般的な評価が低く、現在、本書は在庫切れで入手しづらい状況です。とてももったいない。
2017/10/22
momo
作家海藤正夫が書いた作品としてあとがきまであり、思わず佐藤正午の小説であることを忘れそうになるような小説です。この手法は他の作品でも見られ、名作「鳩の撃退法」へとつながっていくのだと思うと、とても貴重な作品だと考えられます。各章ごとに文体が変わり、佐藤正午さんがよく語られる文芸の可能性を実感します。海藤正夫の描く人物のダメ男っぷりが半端なく、ユーモアと皮肉と可愛らしさが合わさって、無頼派の作家とはまた違った堕落ぶりを堪能できます。死ぬ前に一番したいことは、小説を読むことという内容に大いに共感しました。
2017/12/14
mazda
う~ん、どうしても読めなかったです…。途中棄権でした。僕には合わないのかな…?どなたか、この作家さんのオススメあったら教えてください。
2012/10/18
akio
不条理と不安定さに満ちた物語。変わり続ける語りのせいなのか。「よくよく考えるというのはくよくよ考えるということ」なぜだか妙にこの言葉が府に落ちた。破滅型の方とはお近づきにならずに暮らしていきたい。
2014/11/14
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