求婚の密室 新装版 (光文社文庫 さ 3-109 笹沢左保コレクション)
求婚の密室 新装版 (光文社文庫 さ 3-109 笹沢左保コレクション) / 感想・レビュー
🐾Yoko Omoto🐾
再読。笹沢氏渾身の密室トリックを扱った本格推理の秀作。西城豊士は自らの誕生パーティーと娘の婚約発表を兼ね13人の男女を別荘へ招待した。だが翌朝、西城夫妻は完全なる密室状態の地下室で服毒死体となって発見される。密室トリックとダイイングメッセージの謎ともに納得の出来栄えで、3人の人物がそれぞれの推理を披露しながら故人との関係や動機が徐々に浮き彫りになる展開も面白い。意外性を孕む真相は某海外古典の名作を彷彿とさせつつ更に一工夫加えられた秀逸さで、探偵役「天知」の苦悩の推理と悲劇的な幕引きにはカタルシスを感じる。
2014/06/15
夜間飛行
気の進まない婿選びをさせられるのは犬神家の一族の縮小版で、それはいいとしても推理合戦の勝者が求婚できるという趣向に無理がある。ヒロイン富士子の父はなぜ、13人の敵対する人物ばかりを別荘に招いたのか? 靄がかかったような謎の中で結ばれていく天知と富士子の恋は、甘美さと危うさの絶妙なハーモニーを奏でる。密室で発見された死体とdying messageを巡り、互いに疑い合う客達。古典的かつ重厚な枠組に、心理的な駆け引きも愉しめる逸品だ。ただし脇役の影が薄いのが残念。昭和のミステリの馥郁たる香りを嗅ぐ事はできる。
2014/07/27
マヌヌ2号
なるほどこれはすごい。笹沢左保作品を読むのはこれで3作目なんですが、やはりこの作家のミステリは、最後に出来上がる全体図で魅せてきますね。作中のすべてが、驚くほどに無駄なく物語の成立に費やされている。本作で現れるすべての人物、出来事は、作中において何らかの役割──それは重要な役割からレッドヘリングまで多岐に渡る訳ですが──を持っており、よくこれだけ複雑な物語を作ったものだと感心してしまいます。相関図を書き出すとえげつないことになりそう。密室の解決は、画がすぐに頭に浮かぶようになっているのが素晴らしいですね
2019/06/13
tara
犯人の見当をつけるのは比較的容易だが、それにもかかわらず“犯人告発”のくだりには戦慄を覚えた。現場に残されたメッセージ、選択された凶器、入り組んだ人間関係、犯行の動機。これらの要素が全て「密室」と有機的に結びついているのが恐ろしい。
2019/07/05
押さない
一見してわからないダイイング・メッセージの意味、密室を作り上げた犯人。この2つの何故がどちらも「人間関係」に起因している。推理勝負もなかなかの見どころ。今現在の小説に比べるとドラマ物語・人物キャラクターの掘り下げは型通りで薄味。トリック・ミステリー以外の部分も求める人には向いていない。このあたりは個人の好みが反映されるだろう。
2018/06/10
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