カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)
カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
この巻には2つの重要なエピソードが含まれる。1つがイワンによって語られる長編詩「大審問官」であり、もう1つはアリョーシャの編集した「長老ゾシマの一代記」である。そのいずれもが神学的な内容と深く関わるが、イワンの語る物語は、衝撃的でありつつ、強い説得力を持っている。それは、15世紀末のセヴィリアに現れた「彼」(キリスト)が、大審問官によって「異端」とされる物語である。また、ゾシマの予言「自由な智恵と、科学と、人肉食という暴虐の時代」と、希望「この偉大な事業を、私たちはキリストと共に成し遂げる」の意義は深い。
2013/04/11
パトラッシュ
スターリンは本書を深く読み込んでいたのではないか。宗教を否定する社会主義国ソ連は神に代わる倫理規範を持たないのを元神学生として痛感していた彼は、単純で恥知らずでひざまずく相手を求めている人間を秩序に従わせるのは大審問官こそ適任だと認めたのでは。人間社会にとって耐えがたい自由と良心が抱える苦しい秘密を、進んで持ち込ませ服従させる代償に万人を幸せにすればよいと。人びとを支配し、秘密を守る自分を頂点とする教会(=共産党)の一部だけが不幸になれば、平安と幸福の王国が初めて訪れると本気で信じたのでは。(3巻に続く)
2020/05/04
あきぽん
カラマーゾフの兄弟はそれぞれロシアを象徴しているように思える。すなわち長男ドミトリーはチャイコフスキーやラフマニノフの曲のようなロマンチックな情熱、次男イワンはロシア政府のような知的で冷徹な無神論。そして三男アリョーシャの純粋な博愛精神も、現在ウクライナを攻撃しているロシア魂にあるはず…。
2022/04/14
morinokazedayori
★★★軽妙な会話がポンポンと続いていく部分は楽しく読めたが、翻訳者による巻末の読書ガイドにもあるように物語の展開はとても緩やか。宗教観に関する部分は咀嚼するのに時間がかかった。ただ、「常におこたりなく自分をかえりみて、自分が光となり、罪あるものを謙虚な愛で見つめよ」の箇所には、ガツンと頭を打たれた気分。誰もがこのような心持ちであれば、世の中うまく回るのにと思う。自分がそうあれるよう、心がけようと思う。
2016/07/06
ケイ
2日目の出来事。こここでアリョーシャの語りは終わる。イワンとのやり取り~誰なら殺されるべきかと書かれていると思っていたが、何が許されるべき、赦しはどのような行為や人に与えられるべきかの話であるのかもしれない。また、現世でのパンか来世でのパンかという例えは、今のコロナ禍では現実に即して考えられることであり、それゆえに生々しい。とはいえ、安心して興味深く読める巻
2021/06/09
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