カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)
カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
終わった。これだけの大作になると読了の感慨もひとしお。1週間『カラマーゾフ』の毎日だった。さて、物語は4人の死が一種のキー・コードになっている。まず、ゾシマの死―それはロシア正教会の長老制の終り(制度としてではなく、精神的な意味で)だったのだろう。続いてフョードルの死―このことによって、兄弟の、また周縁の人々の本質と実態が大きく浮かび上がってくることになる。スメルジャコフの死―被支配階級の中から生まれてきた新しい階層の、あるいはテロリズムの死だろうか。イリューシャの死―それは愛と未来の希望への希求なのだ。
2013/04/15
パトラッシュ
エピローグに強い違和感を覚えた。父が殺され師父が死に、長兄が父殺しで有罪となり次兄は狂気に囚われ仲の良かった少年も病死し普通の人間なら絶望に打ちひしがれるはずが、アリョーシャが明るすぎるのだ。弟子ともいえる少年たちに希望を見い出したのだとしても、一生分の衝撃的な体験直後とは思えない。考えてみれば彼は父が死に兄二人が無力となった結果、カラマーゾフ家の全財産を事実上相続したのだ。誰にでも愛される聖性の持ち主と思われながら、実はどす黒い悪意と欲望が渦巻いていたのか。本編中で心理描写がほとんどなかった点もあるし。
2020/05/07
あきぽん
最終巻はほぼ解説。解説も難しかった。自分はそんなに頭良くないので深く読み込めない。でもこの小説のキャラ達がとても魅力的で、家族の葛藤のみならず恋愛・金・階級・宗教・イデオロギーなどあらゆるものを詰め込んだミステリー仕立ての普遍的ストーリーであることはわかった。ああしんどかった。一部のインテリだけのものにしとくのはもったいない!!
2022/06/04
kazi
カラマーゾフ万歳!で物語は終わり。村上春樹さんの言葉を借りるなら、「もう一度読むといい、この小説にはいろんなことが書かれている」だな。新潮版で初読のときは感じなかったけど、この小説には消化されてないテーマが山積みになってる。子供たちとのエピソードを善良なアリョーシャの心温まるストーリーとしてのみ読んでたけど・・。改めてみればコーリャの思想性・人間性から不穏な影がちらつく。アリョーシャの予言、「君は全体として不幸な人生を送る」。絶対的に善だと思っていたアリョーシャ本人にも。「僕は兄さんと同じだから・・」
2020/06/07
Kajitt22
短いエピローグは心静かに読了。カラマーゾフの下劣な力との決別、新しいロシアへの期待をこめた最終章だった。それにしても、アリョーシャ以外の登場人物の心の起伏の激しさははどうだったろうか。特に女性陣はカテリーナ、グルーシェニカをはじめ皆、近づくとやけどしそうなほどの激しさだった。その昔、ソビエト映画『戦争と平和』のリュドミラ・サベーリエワに憧れを持った者としては、書かれなかった第2部の小説に、彼女のようなヒロインが登場していたと思いたい。再読。
2019/03/14
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