赤と黒 (上) (光文社古典新訳文庫 Aス 1-1)
赤と黒 (上) (光文社古典新訳文庫 Aス 1-1) / 感想・レビュー
ころこ
各章のタイトルはその章の出来事を象徴的に表していて、タイトルの直後にある引用による警句があることで読者の深層に留める効果を生んでいる。「レナール」といったり「町長」といったり登場人物の呼び方が変わるのが読み辛い一因だが、この場合はレナールの社会的立場、例えばヴァルノの政治的な対立を読者の深層に訴えかけたい作者の企みだ。目まぐるしく変わる社会で英雄主義に乗り遅れた若者の尊大な自我を描く。当時の社会情勢という表層と、日本の戦後社会にも当てはまりそうな普遍的な深層とを表現しており、本歌取りされるのはそのためだ。
2023/10/05
fseigojp
ジュリアンよりレナール夫人の可憐さが引き立つ 注:ジャンセニズムとは神の恩寵の意味の絶対化と人間の非力さの強調が本義であり、コルネリウス・ヤンセンの著作『アウグスティヌス~人間の本性の健全さについて』に由来する。カトリック教会からは異端とされた。 7月革命を予言していたとの自負から1830年代記と副題が付けられた
2015/09/17
シュラフ
主人公は野心家の若者ジュリヤン・ソレルなのであるが、その恋人となるレナール夫人が圧倒的な存在感。貴族夫人と農民の子、3人の子の母とその家庭教師、30女と19の青年、結ばれてはいけない関係なのだが、2人は関係してしまう。ソレルは夫人に対してどこか醒めている。男と女の関係はホレたほうが負け。夫人のソレルに対する献身ぶりが痛々しい。世間知らずの夫人のはずなのだが、2人の関係が世間にばれそうになったときになぜか力強くなる。そして関係を続けるのが無理になると、突如として良心の呵責に苛まれる。あ~、女は分からない。
2016/11/22
星落秋風五丈原
【ガーディアン必読1000冊】貧しい育ちのジュリアン・ソレルの恋と野望の物語。人妻を誘惑するつもりが恋の病に取りつかれてしまう詰めの甘さがいかにも若さ。
2006/09/04
白のヒメ
親と兄弟に虐待されて育ってきた農民のジュリヤン。しかしその自尊心は強く、聡明で美形。ナポレオンに憧れ、出世向上野心の強い若者だった。16歳で嫁いできて恋も愛も知らぬ貴族出身のレナール夫人は、子供の家庭教師としてやって来たジュリヤンの情熱に惹かれていく。二人の不倫の恋が絶望的になるまでが前巻。このジュリヤンというのは面白い主人公で、愛を語るわりには常に冷めている。自分の為なら冷静に他人を利用できる策略者だ。愛されずに育った生い立ちが、彼の精神を形成しているのだろうか。その心理描写が興味深く引き込まれる。
2014/02/05
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