鹿と少年(下) (光文社古典新訳文庫 Aロ 3-2)
鹿と少年(下) (光文社古典新訳文庫 Aロ 3-2) / 感想・レビュー
白のヒメ
「この世には自分の力ではどうしようもないことがある」それを知る事が大人になるという事ならば、この物語の少年はこの物語が終わった時、大人になったのだろう。けれど動物をペットとして飼っている人は、きっと主人公の感じたようにやるせない地団太を踏みたくなるだろう。こんな事を知るのが大人になるという事なら、大人になんかなりたくないと。「人生は裏切る」何回も出てくる言葉だ。作者は女性。荒い印象を受けるこの物語はどうやって生まれたんだろう。別な興味が沸いてくるほど、感銘を受けました。これは児童文学ではありません。
2016/01/31
巨峰
「仔鹿物語」の新訳による全訳本は、少年ジョディが厳しい環境の中で急激に大人にならざるをえない話になっている。父は言う、お前に一人前の人間として話しておきたいことがあると。「人間は覚悟しておかなくちゃならんことがある。人生というものが、そもそも、人を裏切るものなんだ。」「たしかに、人生はいいものだ。だが楽ではない。人生は人間をぶちのめす。立ちあがると、またぶちのめす。おれは、これまでずっと、楽な人生ではなかった。」「ぶちのめされたら、どうするか?それが自分の背負うものだと受けとめて、前に進むしかないんだよ」
2015/10/03
えりか
人生は人間を裏切り、ぶちのめす。だから覚悟しなくちゃいけない。そして、どんなにぶちのめされても、それを背負って前に進むしかない。過酷で悲しい体験をして少年は大人になった。きっと誰にでも子供から大人へと成長を遂げる1年間というのがあるのかもしれないなぁ。大切で忘れがたい1年。
2015/07/12
フミ
「鹿のアニメやってるから」で読み始めた少年文学の下巻です。上巻の後半で、悲しいエピソードがあったにも関わらず、19世紀後半・フロリダ半島の開拓地の自然は、容赦なく少年たち一家を襲って来ます。自然災害、疫病、飢えた獣の襲撃…。春から始まった物語が、気が付くと1年が経過して、少年が拾い、育てた「仔鹿」も大きくなってしまい…という感じの物語です。全400頁中、320頁辺りからは「どういう終わり方をするのか?」と、悩み苦しむ少年に同情しつつ、引き込まれる感じでした。「最後の父親との会話」が、心に沁みました。
2024/08/31
ぱせり
残酷で悲しい。それだからこそ美しい自然。それは、彼がこれから分け入っていく人生の象徴でもあるかと思います。それを自ら選び取る覚悟を決めたときが、少年期の終わり。これが成長なのだ、成長って、こんなにきついものなのだ、と思い知らされました。知っているつもりの『子鹿物語』は、ここにはない。最後の一文を読みきったとき、しばらく何も言えませんでした。
2010/04/27
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