白魔 (光文社古典新訳文庫 Aマ 3-1)
白魔 (光文社古典新訳文庫 Aマ 3-1) / 感想・レビュー
takaichiro
マッケンのキリスト教的なオカルト小説?巻末の解説がないとただ不思議な渦がぐるぐる回っている文書と思えてしまう。例えると映像化されたツインピークスをはじめてみた時の様な感覚。薄気味悪い。でも微かに神秘的な空気が漂う感じもある。ロジックではっきり理解できないのに感覚的に魅了される。日本のホラーはどうしてもジメジメした感じが残る。本書は西欧中世のキリスト画に偶にある怖い絵に目を奪われ、シッカリ押さえつけられる様な、強いざわざわ感が伝わってきました。西欧オカルト、しかも古典。結構面白い分野かも。
2019/07/21
優希
ミステリアスな雰囲気が漂う美しい幻想の世界が広がっていました。「白い人」に魅せられ、導かれていく『白魔』は描写に次ぐ描写の中で、少女が徐々に違う方向へ行き、異なる世界の虜になる雰囲気に鳥肌が立ちました。人が奇妙な変化を遂げていくのが怖かったのでしょう。『生活のかけら』も記憶の甦りにより、本当の自分に覚醒していく姿に背筋が凍りそうになりました。魔の世界を幻視するような怪奇の世界は恐ろしさをたたえていますが美しさがあると思います。
2014/10/22
星落秋風五丈原
『白魔White People』生まれた時から、皆にはわからない言葉を喋っていた少女は、もともと素質があった。その後、乳母に連れられて外出した少女は、乳母が恋人と逢引している間に、白い人たちがやってくるのを見る。その事を乳母にいうと血相を変え、誰にも言ってはならないと言われる。「公にはできないやり方」「口にできない言葉」など手記では曖昧にぼかされている。マッケンはいわゆる世渡り下手で、アルフレッド・ダグラス卿を怒らせて困窮生活を送るが、有志に助けられる。「汚物文学」と批判者には言われたとか。ひどい。
2024/09/10
あたびー
#日本怪奇幻想読者クラブ マッケンの中・短編集。平井さん以外のマッケンは初読み。ウェールズの森や谷、鬱蒼とした木々に囲われた川の流れ、そういったものの草いきれの様な濃厚な空気を嗅ぎながら読む物語。「白魔」は善と悪の定義についての前ふりに続き、ある少女が幼時からの記憶や経験を書き綴った手帳の内容に移る。乳母(乳をくれたというよりnanny?)の語る太古からの言い伝えや伝説の洗礼を受け長ずるに従いそっちの世界に踏み込んでいく…普通歳を重ねると遠ざかる世界に益々近づいていくというのが怪しく美しい。
2020/01/30
拓也 ◆mOrYeBoQbw
『生活のかけら』を再読です。南米のコルタサル的な、あるいは「奇妙な味」的な先駆作品を探すと意外な事にマッケンのこの作品に当たるという不思議さ。ポー、ラヴクラフト、スミスあたりが徹底したロマン主義の流れを組んでるのに対し、マッケンはホラーでもリアリズムや表現主義も書ける器用な作家で、この『生活のかけら』が化学変化を起こした感じがありますね~。散文詩の耽美幻想も上手いですが、作風に幅があるので面白いですね。
2017/07/11
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