盗まれた細菌,初めての飛行機 (光文社古典新訳文庫 Aウ 4-1)
盗まれた細菌,初めての飛行機 (光文社古典新訳文庫 Aウ 4-1) / 感想・レビュー
Tetchy
“SFの父”と称される、今でも彼の生み出したアイデアが手を変え、品を変え、新たな物語を紡ぎだしているSFの巨匠H・G・ウェルズ。しかし本書に収められた短編郡はそんなSFの巨匠といった堅苦しいイメージを払拭するようなユーモアに満ちた作品が多く収められている。いや正確に云えばその味わいはユーモアよりもシュールである。いやはや私にとってのウェルズの原書体験は子供の頃に世界名作文学集で読んだ『宇宙戦争』で、その内容は世界の破滅を描くディストピア小説でなんとも暗い雰囲気だっただけに、この意外な滑稽さには驚いた。
2021/05/24
KAZOO
ウェルズというとSF小説、冒険小説を思い出すのですがここには未読の短編小説が10以上も収められていて楽しませてくれました。SFというよりもユーモアあるいは怪奇的なもので楽しませてくれます。表題作2作は楽しめます。さらに付録で楽しませてくれて、本人の若いころと年取ったときの人物像が面白いですね。
2018/02/23
takaichiro
英国作家ウェルズの短編集。テーマと詩的表現の組み合わせが独特。読みやすくはない。その他の特徴として自然科学とユーモアの融合実験的な試みがある。理系大学院生が「サイエンス」と「ウケ」を同時に表現する空想・妄想作品を書きたいと思ったらこんな感じになりそう。ユーモアはブラック系。星新一さんのSFショートショートを長めにして自然科学の知識を嫌味なく挿入した様な作品構成。一般大衆より、エリート層に向けたメッセージが込められているのかも。凡人の脳にはそれぐらいしか解釈できず、さらに読書道の険しい山を登る決意を固める。
2019/08/10
マエダ
表題作の盗まれた細菌はウィットが利いていて面白い。
2018/10/15
星落秋風五丈原
「盗まれた細菌」細菌学者は研究者に招いた男に「これはコレラ菌で世の中にばらまいたら大変な事になる」と言う。細菌学者は男の表情に病的な悦びの表情が浮かんでいるのに気づく。一瞬満足げな表情がよぎる男。はい、この先男が何を考えているかわかりますね。その通りです。でも、結果はその通りにならないのです。その理由は?「奇妙な蘭の花が咲く」「自分には何も起こらないのがつまらない」とこぼしていたウィンター・ウェダーバーンは即売会で気に入った蘭を購入した。女性は理性的ですが取りつかれた男性は手の付けようがないですね。
2022/05/24
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