青い麦 (光文社古典新訳文庫 Aコ 5-1)
青い麦 (光文社古典新訳文庫 Aコ 5-1) / 感想・レビュー
takaichiro
フランス恋愛文学。コレット流と言わんばかりの美しい情景・心情描写で全体を満たした作品。美しく若い男女の恋愛模様に、アラサー女性が悪戯っぽくちょっかいを出すあたりをアクセントに、まさに麦の若葉が醸すむせる様な空気感。若井男女がお互いを思う気持ちのズレに戸惑い、自分を好きでいてくれることに心を熱くする。まあ感情の変化が激しく、速いこと。若いって初めての体験をいちいち反射神経で受け止める時だったな。ブルターニュ地方の美しい浜辺、植物や生物、そして風が彼らを包み、恋愛物語に鮮やかな色彩を与える。絵の様な作品。
2019/09/05
星落秋風五丈原
幼馴染のフィリップとヴァンカが両親に連れられてブルターニュでバカンスを過ごす。いつも通りのエビ獲り場面から物語は始まるが、ヴァンカが三年前から着ているスカートは恋愛の機微を知り尽くした作家コレットが背が伸びて膝丈が見えるくらいだ。一年前までは気づかなかったチラ見せが、フィリップには気になっている。もうこの場面で二人がぎこちなくなりつつある事がわかる。 なまじ幼い頃から知り合っているだけに、両親間では「いずれ結婚させようか」という話も出てきているが、当人同士は言葉だけで実態がぴんとこない。
2022/01/15
優希
青春の美しく甘酸っぱい香りの漂う作品でした。幼い頃から一緒にいるフィリップとヴァンカは思春期になり互いを意識するようになります。幼馴染だけれど異性としての感情が芽生えているような恋愛小説。少々ぎこちない関係と謎の女性の登場。フィリップは何度も女性と会うようになり、ヴァンカとはどうなるのか不安にさせられますが、だからこそ純粋に愛し合っていたことに気づかされるんですね。自然描写が鮮やかで美しく、映画を見ているような作品でした。とても綺麗な作品です。
2014/10/11
みっぴー
《カラーズフェア》第一弾。思春期の少年少女の恋物語。別に珍しくもないし普通じゃない?って思うけれど、実は"当時"にしては非常に珍しい作品だそう。なぜならあるのは大人の男女の恋愛小説ばかりだったんです。夏休みにいつも通り幼馴染みのヴァンカと過ごすフィリップ。しかし、偶然出会った年上の女性に気持ちが傾いてしまい、、、。ヴァンカに対して罪悪感を感じつつも、マダムの抗い難い魅力を振り切ることが出来ない。よく考えたら二股も楽じゃない、というか精神がタフでないと耐えられないなぁ。
2018/07/26
ころこ
鹿島茂の「解説」が秀逸です。文化人類学的な財産の移動や処女性が重んじられていたために結婚後に不倫をするという逆説が明治時代の日本では捨象されて、単に風紀を乱すという理由で受け入れられず、不倫のアンチテーゼとして本作は日本で受け入れられた。しかし、時代的制約からフランスの文脈にはこの両者には転倒がある。幼馴染と恋愛はマンガをはじめとしてよくあるパターンで、本作は古典文学ということで読まれているだけで、優れているところは正直ないかと思います。だからといって読む必要がないとはならないのが古典というものでしょう。
2021/11/23
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