秘書綺譚: ブラックウッド幻想怪奇傑作集 (光文社古典新訳文庫 Aフ 9-1)
秘書綺譚: ブラックウッド幻想怪奇傑作集 (光文社古典新訳文庫 Aフ 9-1) / 感想・レビュー
青蓮
ブラックウッドの幻想怪奇傑作集。「空家」「壁に耳あり」「スミスーー下宿屋の出来事」「約束」「秘書綺譚」「窃盗の意図をもって」「炎の舌」「小鬼のコレクション」「野火」「スミスの滅亡」「転移」短編11編収録。幽霊譚が多く、どの話も背筋がぞっと寒くなるような物ばかり。深い闇に霧が立ち込めるような雰囲気があります。一番不気味に感じたのは表題作の「秘書綺譚」かな。食事シーンがグロテスク。「真空」と言うのも意味深。死者が訪ねて来る「約束」も良かったです。
2016/11/01
優希
ジワジワと歩み寄る恐怖を感じました。扉を開けた先の何も見えない世界をたゆたうような感覚とも言えます。生々しい怖さではないのですが、ザワザワと心が波打ちました。それでも端正な幻想の世界が誘う怪奇に酔い仕入れる時間があり、好みの短編集です。
2017/05/08
takaichiro
ブラックウッドの幻想怪奇作品集。この方の幅の広さは稀有。「恐れ」ってこんなにバリュエーションがあったかなと、様々な視点でザワザワを感じました。霊的なもの、自然の脅威、人の闇。このあたりを中長編で味合うことに慣れきったシナプスに、珠玉の短編が畳み掛け、新しい刺激に不思議な高揚感が。コテコテのファンタジーとは異なる手法で人を異次元世界にワープさせる様。美食家を自称する高級レストラン荒らしが、旅先の田舎食堂で何の気なしにオーダーした親子丼が世界一美味いと感じ「世界は食べ尽くせない」と悟った時の様な読後感。
2019/08/09
財布にジャック
初めて読む作家さんですが、怪奇小説だというので、一人の部屋で読む勇気はなく、人の沢山いる電車の中で読了しました。正直思ったより怖くないとその時は感じました。しかし、その晩夜中に怖い夢にうなされて目が覚めて、あらためてこの小説の怖さを実感しました。幽霊とか吸血鬼とかおなじみなはずなのに、潜在意識に残るタイプの怖さにまいりました。どことなくラヴクラフトに似ているかなぁとも思いました。
2014/01/23
ひめありす@灯れ松明の火
その名の通り、職業秘書ショートハウス氏を主人公にした短編集。時代のち違い、年齢の違いによってちょっとずつ性格や行動理念の違うショートハウス氏ですが、怖いものとの向きあい方は、逃げたいはずなのになぜか逃げ切らない、という所で徹底しています。それが私たち読者の視線とぴったり合うというか、家政婦は見た的な野次馬心を余計に煽り立てているというか、とにかく最後まで飽きずに引っ張り込んでくれます。文章そのものはかなり古いはずなのですが、それを感じさせない鮮やかな訳も素晴らしいと思いました。
2012/03/03
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