サロメ (光文社古典新訳文庫)
サロメ (光文社古典新訳文庫) / 感想・レビュー
クプクプ
平野啓一郎の翻訳が肩の力が抜けていて、それでいて情熱的で、魂のこもった、絶妙な作品に仕上がっていました。戯曲としても、私にとってはシェイクスピアより数段、読みやすかったです。本文の後に、平野啓一郎の訳者あとがきが載っていますが、他のどの本よりも平野啓一郎がサービスして本音を語っているので、読む方は非常に得をした気分になりました。個人的に、運命の出会いだった北杜夫の「どくとるマンボウ航海記」以来の、私にとって2冊目の運命の一冊になりました。航海記から20年経って、運命の出会いは平野啓一郎訳の戯曲だったとは。
2024/03/18
巨峰
平野啓一郎訳ということで話題のサロメの新訳。意外に読みやすくて、解り易い訳だと思う。短いし。まぁ、読み込めばいろいろ深いのでしょうね。ただ、本文が80ページなのに大量の解説等々を上乗せして750円超という価格にしたのはどーなんだろう?!と光文社には疑問を呈しておこう。無邪気だけど同時に残酷なある種の少女としてサロメが描かれている。
2012/04/22
molysk
王女サロメが、祝宴での踊りの報酬として義父ヘロデに求めたものは、預言者ヨカナーンの首だった。新約聖書では、母である王妃へロディアが、不義の婚姻を非難した洗礼者ヨハネの処刑をサロメに唆したとする。無知で従順なサロメ。ワイルドの戯曲におけるサロメは、淫靡な毒婦、豪奢で耽美で幻想的。これが従来のイメージだった。本書では、訳者の平野啓一郎が、ワイルドの表現したかったサロメに立ち返るとして、少女的で愛らしく純真、だが母親から身に覚えのない淫婦性を受け継いだ存在、言い換えればキリスト教の原罪を担う存在として描く。
2019/11/29
yumiha
「ヨカナーンの首を所望したサロメ」という大まかな捉え方だったので、悪夢を呼びそうなおどろおどろしさは苦手、とこれまで敬遠してきた。でもオスカー・ワイルドは、どう描くのだろうと本書を開いた。結論から言えばよかった。平野啓一郎の訳も註も後書きもよかった。これまで我儘娘の気まぐれサロメ、あるいは上から目線のヨカナーンと切り捨ててきたが、違う姿で見えてきたからだ。またひたすら難解!と思って来た『日蝕』も、違う見方ができた。田中裕介の丁寧な解説も、宮本亜門の見方も、納得できるものがあって、エエ本を購入できたと満足。
2020/08/21
財布にジャック
ギュスターヴ・モローの「出現」という絵を思い出しました。その絵を観た時は何の場面なのか知らなかったのですが、これを読んでドキッとしました。こんな短い文章なのに忘れられない凄いインパクトのある内容です。狂気という言葉がこれ程までにしっくりとくるお話も珍しいです。
2014/02/24
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