緋文字 (光文社古典新訳文庫 Aホ 5-1)
緋文字 (光文社古典新訳文庫 Aホ 5-1) / 感想・レビュー
buchipanda3
19世紀のアメリカ人作家による小説。舞台は独立前のニューイングランド地方。植民して間もないピューリタンの風土が色濃い17世紀の社会や通念が描かれているのが興味深い。題名は、不貞の罪を犯した女性ヘスターが常に胸に緋色の文字Aを刺繍した布を付ける懲罰が元だが、そこに込められた意味は謎めいており、色味から魂が焦がれるような強い思いも感じられた。物語では三者が抱える三様の罪の苦悩が交錯する中、自らの罪を曝け出す真実の力の大きさが示される。加えて天真爛漫な娘パールの存在も大きい。彼女の変化の姿も印象的だった。
2023/06/02
優希
17世紀のニューイングランドにおける「A」の緋文字にまつわる物語。女性が刻む「A」の証しから罪を償うこと、隠して生きることを考えさせられます。罪を背負う女性と罪を隠す牧師が精神に異常をきたすほど思い悩むのが辛いところでした。不倫という裏切りが愛憎劇を生み出し、罪に関わる人々のあり方が変わっていくのは、身を滅ぼす恐ろしさを秘めていると感じます。そこには宗教と失われた信仰があるように見えました。宗教が強い時代に貫通を描いたことはセンセーショナルに思えますが、罪を追求し続けた宗教小説というべき作品でしょう。
2015/11/01
ころこ
「魔法のようにできあがる不名誉の輪の真ん中に立たされて、そのまま出られなくなることが、この刑罰の残酷な仕掛けになっている」ということから、緋文字はスティグマだと分かる。「A」とは最初はadultery(姦通)で、次にableになる。牧師との交流から宗教的な意味を見出すのが自然だ。しかし現代的な開放の意味を読み取るならば「これまでの7年、この子は生きた象形文字として世間の目にふれていた」という一節から、緋文字とはいつの間にか娘パールのことであり、娘の巣立ちから母も緋文字から解放されると解釈することができる。
2023/10/25
aika
アメリカ文学の古典的金字塔として名高い作品ですが、新大陸の刑台の上でも背負わされた緋文字「A」の宿命に怯まず、娘パールと生き続けるへスターの気高さと精神の強靱さに胸を打たれました。若くして聡明で尊敬を集めるディムズデール牧師が精神を蝕まれ、その傍らに居座る謎の老医師チリングワースの存在が、この物語に流れる不穏な空気をより濃いものにします。掴みどころのない、天真爛漫さとは裏腹の恐ろしさも見え隠れする幼いパールが、宿命の3人を繋ぐ結び目のように思えました。ピューリタンとして生きた人々の思考を追体験できます。
2021/06/09
巨峰
なんだか、昼メロみたいやん。ちなみに誉めて言ってます。やや面倒くさい序章税関を過ぎるとご褒美が待ってます。
2013/09/23
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