白夜/おかしな人間の夢 (古典新訳文庫)
白夜/おかしな人間の夢 (古典新訳文庫) / 感想・レビュー
アキ
「おかしな人間の夢」はドストエフスキー56歳・1877年発表。「白夜」は27歳・1848年発表。前者は、明晰夢と現実が入り混じった真理にまつわる物語。難解に感じた。後者は、副題にあるように初期の明るいタッチの感傷的な小説。ナースチェンカに恋をする夢想家の僕のたった4夜の思い出。僕はペテルブルグの夜の運河で泣く彼女に会った途端に恋に落ちるが、1年前にこの場所で求婚すると約束した彼が現れ、もう少しで結婚に至るところが叶わなかった。大仰なセリフとドラマチックなストーリー展開は、彼のイメージからは意外に感じた。
2022/02/15
藤月はな(灯れ松明の火)
キリスト教での自己・罪と罰・博愛の意義を俗世の様子も交えて長々と書くことで有名(つまり、暗く、重く、長い)なドストエフスキー。しかし、ドストエフスキーは鰐に夫を食べられた奥さんの混乱と慣れを描いた不条理ブラックコメディ『鰐』も書くほど、モラヴィアのように堅くなく、意外と捌けたストーリー・テラーだった。『白夜』は語り手の夢想家でちょっと調子のいい青年よりもナースチェンカに感情移入してしまいます^^;特に語り手の青年を愛する理由が「あなたは私にめんどくさいと思う程、愛さないから」という理由には頷いてしまいます
2015/08/31
kazi
お目当ては白夜でした。ドストエフスキーは大天才だと思っているのだが、この中編はいまいち乗れなかった。後の長編小説のような多面的な視点が見られないからだろうか?とにかく主人公男性の自己犠牲に対して違和感を覚える。『ああ!完全なる至福の瞬間だった!あれは、人間の長い一生涯分に十分足りるほどのものではないだろうか?……』。私にはこのセリフに象徴される考えには上手く感動することができないです。そこに著者の理想が込められているのかもしれないが・・。ドストエフスキーの小説にこんな違和感を覚えたのは初めてかも。
2020/08/14
たぬ
☆3.5 ひょっとしたら、いやひょっとしなくても宗教に関心を抱いていないとドストさんをちゃんと読み解くのは難しいんじゃ? 4編入りのこちらも「おかしな人間の夢」は信仰! 原罪! 神と私! が炸裂していて退屈…。「白夜」はナースチェンカがかわいい小悪魔ちゃんだったし「キリストの~」はフランダースの犬風味でなかなかの味わいだったんだけどね。
2021/11/30
みねね
僕の中でドストエフスキーといえば罪と罰の一巻(光文社古典新訳)だけ読んでそれっきりになっている、なんとも宙ぶらりんな存在だ。トルストイも読んで、ロシア文学は全部が全部ド重厚なのか? と思っていた中でおすすめいただいた作品。文量ではなく、ただ重厚であることがわかった。トルストイよりもロマンチストでキリスト教を色濃く感じる。キリスト教(というかロシア正教?)への理解を試されているような、怒涛の「真なるもの」の表現。そろそろ置いていかれるな……というあたりで現実に引き戻される、絶妙な塩梅だった。
2024/10/29
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