白痴 3 (光文社古典新訳文庫 Aト 1-19)
白痴 3 (光文社古典新訳文庫 Aト 1-19) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
二巻の終わりで呆然とさせられたエリザヴェータ夫人による怒涛の嘆願。三巻での目紛しい心情描写も真正面から吹き付ける突風のようで読んでいてヘロヘロになる(笑)良い人なんだけど、独善的でもある人ってこう言う思考回路なのかしら?その娘でもあるアグラーヤも強烈!!だけど、ムシュイキン公爵に「皆、私の意志を無視しているの!私は結婚したくない。勉強もしたいし、ローマにも行ってみたいの!」に己の気持ちを吐露する所は時代を思うと切ない。しかし、毒虫の夢のくだりは人間や心や生活に忍び込む「悪」を象徴しているようで不穏だ。
2018/03/02
星落秋風五丈原
【ガーディアン必読1000冊】無邪気な公爵公爵の言葉から、アグラーヤが彼を好きだと察知したさすが母親エリザヴェータ夫人が「エパンチン家に帰りましょう!」と彼を連れ帰る…といういい引きだったのになぜか本巻冒頭はロシアの公務員って使えない!論が展開。ナスターシヤはアグラーヤにプロポーズしていたラドムスキーの伯父に対して思わせぶりな事をいって通りすがりに去る。通常ラブストーリーならロゴ―ジン→ナスターシヤ(多分相愛)ムイシキン公爵 の間でどろどろの愛憎劇が繰り広げられるのに公爵のあまりの善人っぷりに女性が引く。
2022/11/02
kazi
ドストエフスキー小説らしくなってきました・・。とにかく3巻はイッポリートがしゃべる、しゃべる、よくしゃべる・・!!病魔に蝕まれたイッポリートの主張、「2週間などというのは生きるに値しない」。人間存在の根源的な不条理さについて考えさせられますね。時間の有限性、疎外感、諦念、醜悪な世間に関する嫌悪感。そう言いたくなる気持ちは非常によくわかる。ある意味ではその考えに惹きつけられもする。しかし、このような物凄く自己完結した理論の帰結として、ピストル自殺しようとするというのはどうなんでしょうね??
2021/01/31
里愛乍
3巻めにして思ったのですが、どうも今まで読んできたドストエフスキーとは空気感が違うように感じます。といってもまだ5作目、そんなに読み込んでるわけでもないのですけども。これまでの4作が陰とすれば今作は途轍もなく陽ですし、湿度も違う。からっとしている。とはいえほぼ会話文のみともいえる展開、彼らの言動は揉めに揉めてはいるのですが…ロゴージンが出てくるとホッとするのはなぜだろう?
2019/05/23
田中
音楽会場でナスターシャが取り巻き連中と騒々しく現れた瞬間だ。ムイシキン公爵が怯んでしまう気持ちに同情する。ずば抜けた美貌ナスターシャは、圧倒的なオーラを放ち、屈服させるパワーがみなぎっているのだ。その後の一悶着は、彼女の豪胆ぶりが剥きだしになる名場面だろう。公園でムイシキン公爵が、アグラーヤの問いかけにこたえた。そこでもナスターシャと公爵の精神的な繋がりがわかるのだ。「イッポリートの告白」は、複雑多岐にわたる難解な思弁。窮極的な立ち位置で語るから、生命こそが根源的な権利を有する真理だと気がつくのだろう。
2022/11/03
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