シェリ (光文社古典新訳文庫 Aコ 5-2)
シェリ (光文社古典新訳文庫 Aコ 5-2) / 感想・レビュー
まふ
ベル・エポック時代のパリの中年高級娼婦と美貌の青年との切ない恋の物語。今日の「パリ」をイメージさせられる街並みや印象派の音楽・絵画、女性のファッションもまさにこのころ全盛だったと言えよう。「花のパリ」そこを舞台にした男女のつながりもまことにシャレているではないか。今日の49歳より遥かに老けていただろう当時の49歳の主人公レアの「老い」への恐怖は深刻であったはずだ。そこに目を付けたコレットの作家的「慧眼」を評価すべきだと思う。G500/1000。
2024/05/02
佐島楓
時代背景と当時の貞操観念などを知らないとちょっとコメントできないかも。解説でも主人公の職業「高級娼婦」について触れていますがまだ自分の知識が足りない。久しぶりに海外文学を読もうとするとこれだから困る(自分の無知さ加減に)。まあ知らなくても恋愛小説として楽しめるんですが、わかっていればもっと面白くなったのがうっすらわかるだけに残念です。
2019/05/22
アキ
49歳高級娼婦レア1912年パリ。正に印象派の画家たちが生きた世界。24歳年下のシェリとの6年に及ぶ付き合い。まるで印象派のような明るさと色彩の豊かさ。シェリが親公認の19歳エミリと財産目当ての結婚をしたが若い妻との言い争いからしばらく家を出るシェリ。一方シェリの結婚で老いも感じるレアはひとり南仏へ。再開したシェリとレアの愛と愛しているが故の憎悪が入り乱れ物語は一気にクライマックスまで怒涛のように読ませる。ラストのシェリの後姿がレアへの想いを告げていた。現代でも通じる男女関係あるある。鮮やかに描いてます。
2019/10/17
ころこ
男女の役割が入れ替わったら小説にもならないはずです。非婚率が上昇している現代で、経済的に自立している女性がシェリのような男性と関係を持つことはあり得ることです。とはいえ、男女で「生きる条件が違う」ところもあります。本作は身体の描写が多く、女性の老いを男性の暴力的な若さと対比しています。男性の場合、老いた身体は『老人と海』のように、精神的な永続性の隠喩として成立する可能性があります。女性の場合は未だその言葉がないのか、本作ではその難しさを隠さず、向き合い描写している問題意識は現代的なテーマとなりそうです。
2021/11/13
ちえ
元高級娼婦で49歳のレアと25歳の青年シェリの6年続いている恋愛。現代語訳でのシェリのセリフが、甘やかされると同時に放任され育った粗野で我儘な性格にぴったり。女同士のブライドや競争心が見え隠れする丁々発止のやり取りも面白い。それにしても作者の女性の老いに対する冷酷な視線。「ビーナスの首飾り」と言われる首のしわ…諸々。読んでいると鏡を見るのが怖くなる。最後、なんと残酷な。窓越しにレアが見つめるシェリ、うわー。解説や後書きも興味深く読んだ。◆ガーディアン必読選書1000
2024/05/11
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